環境省は、優れた省エネ効果を達成しながらも魅力的な空間を創り出す「新たな省エネ照明空間デザイン」の普及を目的として「省エネ照明デザインアワード」を実施し、その結果発表および表彰式を東京の日経ホールで行った。アワードの区分には、「公共施設・総合施設部門」、「商業施設部門」、「その他部門」の3つがあり、それぞれグランプリと優秀賞が発表された。
このアワードは、業務部門におけるCO2排出量の削減を加速するため、省エネ照明を率先して導入し、優れた省エネ効果と高いデザイン性の両立を達成している施設を選定し、その照明デザインの工夫やアイデアを発表・情報発信することで、省エネ照明未導入の施設を所有する事業者等に対して、省エネ照明導入の重要性、省エネ照明機器の有効性を具体的にPRし、省エネ照明導入意識の向上を図ることを目的としている。
募集は、昨年の12月21日~今年の年1月26日で行われ、全体で96件の応募があったという。
公共施設・総合施設部門のグランプリには、美術館展示照明をはじめ、建物全体のベース照明にLEDを採用し、魅力的な空間 と高い省エネ性を実現した次世代型施設「根津美術館」が、商業施設部門では、天井照明のALL LED化を多数のフロアで実現した百貨店「大丸大阪・梅田店」が、その他施設部門では、あらたなるゆとりのシニア邸宅を実現するリズムに考慮した省エネ照明デザインの「東急ウェリナ大岡山」が選ばれた。
根津美術館では、老朽化した施設の改築を2006年から行っており、その際、照明について、2年ごとに300本の交換を行っている蛍光灯をなんとかしたいという思いがあったという。LED照明の導入に際しては、「毎年変える必要がなく、20年はもつだろう」という、業者のアドバイスで採用を決めたという。設置の際には、ベース照明にLEDを利用しながらハロゲンランプを併用し、美術品を自然に美しく見せることに気を使ったという。今後は、美術館のスタンダードとなるよう努力していくという。
審査委員の一人であるカワカミデザインルーム代表でデザイナーの川上元美氏は、「根津美術館は、佇まいがすばらしい。静寂でありながらワクワクさせる空間になっている」と評価した。
大丸大阪・梅田店では、フロアーごとのコンセプトにより色温度を変え、印象を変えているという。商品に光を当て明るくする一方、通路をやや暗くするなどメリハリを付けたという。LEDには、熱や色あせが少なく商品にやさしいという利点もあるという。
東急ウェリナ大岡山は、サービス付きシニア向け住宅で、朝は明るめ、夜は温かみのある色合いなど時間帯で色温度を変え、ダウンライト照明と間接照明を切り替えながら雰囲気を変えているという。
審査委員長を務めた元日本大学教授で工学博士の大谷義彦氏は、「募集期間が短かかったにもかかわらず、96件も応募があった。優秀賞とグランプリの間にはほとんど差がなかった」と、優秀な事例が多かったと評価した一方、審査副委員長の石井幹子デザイン事務所代表で照明デザイナーの石井幹子氏は、「奇想天外な部分は少なかったように思うので、次回は期待したい」と述べた。
なお、優秀賞の公共施設・総合施設部門には「大林組技術研究所 本館」、「東京国際空港国際線ターミナル」、「阪急電鉄 摂津市駅」、「港区立芝浦小学校・芝浦幼稚園」(審査員特別賞も受賞)、「ユビキタス協創広場CANVAS」、「ローム京都駅前ビル」が、商業施設部門の優秀賞には「アリオ橋本」、「ケンタッキーフライドチキン 石神井公園店」、「コープさっぽろ西宮の沢店」、「スターバックスコーヒー 福岡大濠公園店」、「ZENT 豊田本店」、「ドトールコーヒーショップ外苑前店」、「長野トヨタ チューカーボックス川中島店」、「バロー草津店」が、その他部門の優秀賞には「NHK横浜放送局」、「Green Avenue あざぶの丘」、「ポーラ銀座ビル」がそれぞれ選ばれた。