産業技術総合研究所(産総研)は、独自に開発した高感度赤外線撮像技術と高速画像処理技術を用いることで、暗闇でも被写体のカラー動画像をリアルタイムで撮像することができる技術を開発した。
同技術は、暗闇における被写体に赤外線を照射し、被写体に反射された赤外線を独自の高感度赤外線撮像技術および高速画像処理技術により検出、可視光下での被写体の色と同一または近似した色によるカラー動画像として、リアルタイムで撮像、表示あるいは録画する新タイプの撮像技術。
暗闇における被写体の例として(左から)赤、緑、青のイーサネットコネクタキャップ、赤色のジョンソン端子、緑色のバナナジャックを赤外線で撮像したものを、従来の撮像技術によるものと今回開発した撮像技術によるものを比較すると、従来技術による画像が緑色のモノカラーであるのに対し、新たに開発された技術による画像はカラー化することに成功しており、さらに可視光下での色や金属光沢も再現することに成功している。
また、紙に印刷した白抜き文字を赤、緑、青の各色の塗料で着色したものを被写体として撮像したもので試験すると、蛍光灯照明下における通常のカラー画像に比べ、表色に改善の余地はあるものの、可視光下における被写体の色をかなり再現できていることが見て取れる。
今回開発された赤外線暗視カラー撮像技術による画像は、従来のモノクロ、モノカラー、疑似カラーの画像と比較して情報量がはるかに多いことから、例えば、防犯カメラで撮像、記録した画像から、犯人の帽子やカバン、着衣の色などを特定することで、犯罪検挙率の向上につながる期待が高まるほか、画像のカラー化により視認性が向上するため、モニター監視者の疲労・負担を軽減できることも考えられるとしており、研究グループでは夜間の動物観察、車載用アシストカメラなど、さまざまな分野への応用を期待している。
なお、今後は産総研技術移転ベンチャーであるナノルクス研究所へ技術移転し、同技術による撮像装置の高性能化、高耐久性化、小型化を図り、一般使用に耐え得る製品として市販することを計画しているほか、同技術に興味をもった企業を求め、共同で各種の応用開発も行っていきたいとしている。