富士通は、業務プロセスの分析・改善提案とICTシステムの構築における要件定義手法を「Tri-shaping」として体系化し、発表した。4月からは、同社が手掛ける売上3億円以上のプロジェクトには原則適用するほか、2011年度上期より、富士通グループ向けに研修を実施する。また、2011年度下期からは、顧客向けに有償の研修サービスとして提供する予定。
富士通 システム生産技術本部 本部長 柴田徹氏は、「お客様には、経営視点で業務プロセスを変えられる人がいない、業務視点でICTシステムを変えられる人がいないという問題がある。そこで弊社は、人に頼らないシステムによって改革力を上げるため、本製品をリリースした」と、今回、要件定義を体系化した背景を語った。
同社では2007年から上流工程の品質向上や形式品質の向上に、2009年からは内容品質の向上に取り組んでおり、今回発表された「Tri-shaping」がその成果だという。
富士通 システム生産技術本部 SI生産革新統括部 担当部長 森田功氏は、「結合・総合テストでのバグを集計すると、要件定義に関するものが6割を占める。Tri-shapingを利用すれば、要件定義に関するバグの半分以上は削減できる」と、その効果を強調する。
「Tri-shaping」は、年間2万件におよぶさまざまな業種・業務のプロジェクトで得た経営・業務についての知識や、30年以上の要件定義の適用経験に基づいて、要求形成手法「shapingBR」、業務形成手法「shapingBP」、業務仕様形成手法「shapingBS」という3つの手法に体系化し、手順書や分析シールなど全15種類の手法/ツールにまとめている。そして、システム構築過程における手戻りの防止と、要件定義の品質向上を目的としている。
要求形成手法「shapingBR」では、経営層、業務、システムの各部門の要求の全体正整合をとることを目的に、体系的に構造化することによって、システムによって何がよくなるのかという目的と、そのためにどんな手をうつのかという手段を明確に区別し、実現の可否や優先順位を決め、関係者の理解促進を図り、合意形成に導いていく。
業務形成手法「shapingBP」は、要求が膨れ上がり複雑化・肥大化するシステムを、柔軟・シンプルな業務プロセスに導くためのもので、業務の中心となっている必要最小限の業務プロセスを明確にし、そこから派生する業務のバリエーションを洗い出し、整理する。バリエーションの整理では、漏れやダブりがないか、統廃合できないか、将来種類が増えないかを整理ポイントとする。
業務仕様形成手法「shapingBS」では、業務ルールの抜けや漏れ、曖昧さを低減させるための手法で、抜けやすい内容とその洗い出し方を提示し、表で表現することにより、条件の組み合わせでの漏れを防ぐという。また、用語を整理することによって、曖昧さを低減するという。
同社では今後、今回の手法を業界内での標準とする活動も行っていくという。