ソニーは2月3日、2010年度第3四半期(2010年10~12月)の決算概況を発表した。同四半期の売上高は、前年同期比1.4%減の2兆2062億円、営業利益は同5.9%減の1375億円、税引前利益は同6.2%増の1315億円、純利益は同8.6%減の723億円となった。

ソニーの2010年度第3四半期の業績

2010年度第1四半期から第3四半期までの累計業績

2010年度第1四半期から第3四半期までのセグメント別の累計業績

分野別の業績は、コンスーマー・プロフェッショナル&デバイス(CPD)分野および金融分野を除くすべての分野で前年同期比減収となった。CPD分野は、PC関連部品の売り上げが減少したコンポーネントが減収だった一方、販売台数が増加した液晶テレビ、中小型液晶パネルの売り上げが増加した半導体、販売台数が増加したレンズ交換式一眼レフカメラなどの増収効果により、売上高は前年同期比4.2%増の1兆909億円と増加した。しかし、営業利益は販売費および一般管理費の増加、為替影響、売上原価率の悪化、構造改革費用の増加などの要因により同47.2%減の268億円となった。

2010年第3四半期のセグメント別業績

ネットワークプロダクツ&サービス(NPS)分野は、為替の影響を受けたゲーム事業の減収などの影響により売上高は前年同期比6.4%減の5666億円となった。また、営業利益は為替の影響があったものの、売上原価率の改善および増収による売上総利益の増加、ならびにプレイステーション3のハードウェアコストの改善、ソフトウェアの売り上げ本数の増加などがプラス要因となった結果、同139.4%増の457億円となった。

CPD分野の営業利益の増減要因

NPS分野の営業利益の増減要因

映画分野は、「ソーシャル・ネットワーク」が好調に推移したものの、前年同期の公開作品「2012」「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」などの好調な作品が多かったため、そうした影響もあり、売上高は前年同期比26.7%減の1490億円、営業利益も興行収入が想定より下回った映画があったほか、カタログ作品の映像ソフト収入の減少、劇場公開予定作品の広告宣伝費の増加などの影響により同66.7%減の47億円となった。

音楽分野は、デジタル配信の売り上げが増加したものの、パッケージメディアの音楽市場の継続的な縮小およびドルに対する円高の影響もあり、売上高は同14.5%減の1398億円となった。また、営業利益は、広告宣伝費が前年同期比で減少したものの、減収影響により同15.7%減の195億円となった。

金融分野は、主にソニー銀行が外貨建顧客預金に関する為替差損益の改善などが進んだこと、およびソニー生命の保有契約高の拡大による保険料収入の増加などにより、売上高は同1.7%増の2091億円となった。また、営業利益は、主にソニー生命の一般勘定における有価証券売却益の減少などの影響により、同6.6%減の327億円となった。

ソニー・エリクソンは、高価格帯のスマートフォンに注力し製品ポートフォリオを集約したことにともない、携帯電話の販売台数が減少した結果、売上高は同12.7%減の15億2800万ユーロとなったものの、構造改革費用の減少、平均販売価格の上昇、コスト構造の改善により、税引前損益は改善し、前年同期の1億8000万ユーロの損失に対し、2900万ユーロの利益となり、この結果、持分法による投資損益は、前年同期の102億円の損失に対し、4億円の利益となり、4四半期連続での黒字を達成した。

ソニー執行役 EVP CFOの加藤優氏

同社執行役 EVP CFOの加藤優氏は、「為替の影響が最大の要因で、結果として減収減益の四半期となった」と評価し、通期業績をCPD分野の見通しを厳しく見た結果、売上高を2000億円下方修正し7兆2000億円へと変更した。ただし営業利益については「テレビの動向を慎重に見ており、前回(10月)の想定よりもCPDの利益を下に見るも、それ以外の分野が想定よりも上回る形となる結果、据え置きとした」と説明する。

また、通期の業績については、下方修正としながらも、「円高の影響を加味しつつ、前年度とほぼ同程度の業績ということで、この1年で円高に対する対応力が付いたと思える。今期は手堅い見通しをしているが、2008年度のリーマンショックから危機管理モードへ移行し、2009年度で組織体制を変化させることで、一定の成果を出したが、金融が頑張って黒字化を果たしたに過ぎず、主力のエレクトロニクスが収益に貢献していなかった。しかし、2010年度はエレクトロニクス分野の戻りが強く出てきているイメージを受けており、大きな赤字を抱えていたソニー・エリクソン、ゲーム、テレビの3事業もテレビは地域的な偏りがあり赤字となっているものの、ソニー・エリクソンがスマートフォンへのシフトでイーブンに、ゲームは大きな利益を出すようになってきた」とし、そうした事業分野が年間利益を2000億円押し上げる要因となっており、これまでの改革の成果がでてきていると評価したほか、「危機を脱して、これからの成長にこうした利益をどう向けるか、効率を考えた投資を、事業ごとに精査し、東芝から長崎工場を買い戻しイメージセンサにシフトするように、商品の差異化につながるものに投資を行っていくほか、ネットワーク関連の投資も順次進め、ハードウェアとしてのスマートフォンやNGP、PS Suiteの拡充などを含め、少しずつ事業の幅を広げていくための活動を行っていく」とした。

2010年度通期業績見通し