日本IBMシステムx事業部 事業開発アドバイザリーITスペシャリスト 湊真吾氏 |
「IAサーバの性能はこの5年で6倍くらい性能が上がっている。では、サーバが従来の6倍の仕事をしているかというとそういうわけではなく、使用率が6分の1になっているのが実情。そうした中で仮想化が注目を集めるようになった」
「ジャーナルITサミット - 2010仮想化セミナー」に登壇した日本IBMシステムx事業部 事業開発のアドバイザリーITスペシャリストを務める湊真吾氏はそう語り、仮想化技術が普及していくなかで、どのような視点からハードウェアを選択していくことが望まれるかなどを同社のIAサーバの特徴を紹介しながら解説した。
仮想マシン単価を下げる
湊氏によると、今後仮想環境を構築していくうえでますます重要になるのが仮想マシンの単価だ。「仮想化がない時代は、サーバを購入する際にどのくらいのコストがかかるかを単純に計算していたはず。しかし、今後、仮想化環境に移行する際は、1台のハードウェアのうえで何台の仮想マシンが動くのかを割り算して単価を考える必要がある」(同氏)
例えば、価格の低いサーバに少数の仮想マシンを載せるケース、価格の高いサーバに多数の仮想マシンを載せるケースなど、仮想化の規模や対象によって仮想マシンの単価は大きく異なる。これらを考慮しなければ、今後、本格的に仮想化に取り組もうとする際に大きなムダが生じることにもなりかねない。
これは、実際にサーバのリソースがどのような使われ方をしているのかを見るとはっきりする。IBMの調査によると、2006年と2009年を比較すると、CPUの性能が向上したにもかかわらず、CPUの平均使用率は約半分になっており、ピーク時で見ても使い切れていないという状況にある。
その原因はメモリ不足。メモリの使用量は急激な増加傾向にあり、3年間で約2倍にまで膨れている。その結果、メモリがボトルネックになってしまい、CPUの性能を活かせないという事態に陥っているのだ。したがって、単純にCPUの処理能力だけを基準にしてハードウェアを購入してしまうと、想定していた処理をこなすことができず、ハードウェアの追加購入を迫られるといったケースが発生するのだ。
高価なCPUを搭載しているのにそれを使いこなせていないというムダ。これは1台のハードウェアを効率的に活用できる技術である仮想化においては、その根幹を揺るがす大きな問題となる。したがって、仮想マシンの単価を考えるうえでは、メモリ容量を特に考慮すべきなのだ。
仮想化のボトルネックを解決する
そんななかで、IBMが仮想化環境に適したIAサーバとして提供するのが「eX5」だ。eX5の大きな特徴として、MAX5と呼ばれる拡張メモリモジュールがある。これは、メモリスロットを最大32スロット追加することで、サーバのメモリ搭載容量を大幅に拡張できるというもの。ワークロードに応じて必要なメモリを追加できるため、サーバの用途に応じた構成が可能だ。
「必要なCPU能力と必要なメモリは一律に決めることができない。そのバランスはユーザーの要件に合わせるべきであり、eX5はワークロードに応じて、最適な構成を実現するもの」(湊氏)
では、実際に仮想マシン単価を下げるという点でどのくらいの効果があるのか。IBMの調査では、Xeon 5600番台の2ソケットサーバと、Xeon 7500番台搭載のeX5サーバで比較した場合、仮想マシン単価は9~22%下げることができるという。ブレードサーバでは、最大33%下げることができるという結果だ。
また、eX5が搭載するXeon 7500/6500番台には、ハードウェアに障害が起こった際にそれを検知し、OSに通知・修復する仕組みが備わっており、QPI接続でエラーが発生しても、転送レートの低減やリトライ、別経路による転送を試みることで、信頼性、運用性を高めているという。さらに湊氏は、多くのスロットを備えるMAX5では、単価の安い低容量メモリを使って必要なメモリ容量を安価に用意できることや、そのような構成にしてもパフォーマンスが低下しない仕組みが備わっていることなども紹介した。
そのほか、講演では、仮想化環境におけるネットワークについても触れ、VMware VMotionのようなライブマイグレーション機能を用いる場合は、10Gb Ethernetを利用するといった対処も必要になると指摘。かつてはポートあたり20万円以上のコストが必要だったものが、現在はポートあたり1万円程度にまで下がっていることなどを考慮して、ネットワーク側から仮想マシン単価を下げるという方法も積極的に検討すべきだとした。
※ 湊氏の講演動画を以下の「2011 仮想化オンラインセミナー」で無料公開しています(マイコミジャーナル会員IDとアンケートへの回答が必要)。本稿ではお伝えしきれなかったナレッジも紹介しているので、ぜひそちらも併せてご覧ください。