計測機器の大手ベンダであるテクトロニクス社(テクトロ)は1月12日、報道関係者向けの新製品説明会を開催し、リアルタイム・シグナル・アナライザ(リアルタイム・スペクトラム・アナライザ)の中級機(ミッドレンジ機)「RSA5000シリーズ」を発表した。

テクトロニクス社のマーケティング部部長をつとめる田中雅彦氏。この1月にテクトロニクス社に入社し、マーケティング部部長に就任したばかりである。以前は、計測機器大手ベンダのアジレント・テクノロジーに務めていたこともある

説明会では初めに同社マーケティング部部長をつとめる田中雅彦氏が挨拶し、「RSA5000の"RSA"は"リアルタイム・シグナル・アナライザ"の略であり、リアルタイムに振幅と周波数、位相を解析する画期的な計測器だ」と述べた。

なおテクトロニクス社は以前には、「RSA」を「リアルタイム・スペクトラム・アナライザ」の略だとしていた。同社と競合する計測機器ベンダでは、ベクトル変調信号解析機能とスペクトラム解析機能(スペクトラム・アナライザ)を兼ねた信号解析システムを「ベクトル・シグナル・アナライザ」または「シグナル・アナライザ」の名称で販売している。製品名称をシグナル・アナライザに近付けることで、ベクトル・シグナル・アナライザまたはシグナル・アナライザの購入を検討している顧客層に、テクトロニクス社のリアルタイム・スペアナを購入検討対象に加えやすくするとの狙いがみえる。

テクトロニクス社のテクニカル・マーケティング・マネージャをつとめる榎本誠至氏

説明会では田中雅彦氏の挨拶に続いて同社のテクニカル・マーケティング・マネージャをつとめる榎本誠至氏が、RSA5000シリーズの製品概要を説明した。

RSA5000シリーズには、測定周波数範囲が1Hz~3.0GHzの「RSA5103A型」と、1Hz~6.2GHzの「RSA5106A型」がある。信号を連続して取り込める帯域幅(取り込み帯域幅)は標準で40MHz、オプション(85番)を利用すると85MHzと、ミッドレンジ機としては広い帯域幅を確保した。

「RSA5000シリーズ」の外観(「RSA5106A型」)。外形寸法は幅473mm×高さ282mm×奥行き531mm。重量は24.6kg。ディスプレイは10.4型のタッチ・パネル付きフルカラー液晶パネル

波形の取り込み速度は、標準で最大4万8828回/秒、オプション(200番)の利用で最大29万2969回/秒と高い。単発信号波形を100%確実に補足できる持続時間は、標準で31μs。オプション(200番)を利用すると持続時間の条件は5.8μsと短くなる。

「RSA5106A型」の本体左側面。持ち運び用の取っ手が2個所に付いている。コネクタはない

波形メモリは標準で1Gサンプル、オプション(53番)の利用で4Gサンプル。取り込み帯域幅を85MHzに広げるオプション(85番)と波形メモリを4Gサンプルに拡張するオプションを併用すると、85MHzの帯域幅で最大で7.15秒間、信号波形を取り込めるようになる。

「RSA5106A型」の背面。コネクタがまとめられている

またゼロ・スパン表示(周波数を固定して時間変化を横軸表示)によって信号の振幅と周波数、位相の時間的な変化をリアルタイム表示してくれる。ゼロ・スパン表示での波形更新速度は最大5万回/秒と高い。

RSA5000シリーズの価格(税抜き)は、「RSA5103A型」が426万円より、「RSA5106A型」が618万円より。オプションの選択によって価格は大きく変動する。

なおテクトロニクス社は、リアルタイム・スペクトラム・アナライザの既存製品としてハイエンドの「RSA6000シリーズ」とミッドレンジの「RSA3000シリーズ」を販売中である。RSA6000シリーズは3品種あり、価格は例えば測定周波数範囲が9kHz~14GHz(取り込み帯域幅40MHz)の「RSA6114A型」が1080万円より。RSA3000シリーズも3品種あり、価格は例えば測定周波数範囲が直流~3GHz(取り込み帯域幅15MHz)の「RSA3303B型」が426万円より、となっている。