大日本印刷(DNP)は1月12日、米Molecular Imprints(MII)が提供するナノインプリント用の型(テンプレート)のレプリカ(複製)を製造する装置「PERFECTA MR5000」の導入を決定したことを発表した。
ナノインプリントによる半導体製造は、一般的なフォトリソグラフィと異なり、テンプレートに刻まれているパターンをウェハ上に直接を型押しし、回路パターンを形成しようというもの。フォトリソでは、露光波長が短くなるにつれ、ウェハ上に正確なパターンを形成することが難しくなるため光学的近接効果補正(OPC)などを活用するが、ナノインプリントではハンコのように物理的に等倍で型押しを行うため、そうした複雑なデータ処理を行わなくて済む、製造装置コストを低減できるなどのメリットがある。しかし、量産時などの大量生産においては、型が磨耗や疲労することから、定期的な交換が必要となっていた。
テンプレート複製装置は、マスターのテンプレートを実際の製造に用いず、レプリカを用いて製造することを目指して開発されたもの。DNPはMIIと戦略的提携関係を構築、2009年7月よりテンプレートの複製技術をの開発を共同で進めてきた。今回の複製装置導入の決定も、こうした流れを受けたもので、第1号機はすでに同社上福岡工場に導入されている。
今回導入された装置では、MII独自の製造方式である「Jet and Flash Imprint Lithography(J-FILTM)」に基づき、原版となるマスターテンプレートを用いて、6インチ角で厚さ0.25インチの石英ガラス基板(6025規格)に、原版パターンを転写してレプリカテンプレートを製造する。
工程は、まず従来のフォトマスク製造に使用する電子ビーム描画(EB)装置を用いて回路パターンを石英ガラス基板上に直接描画してマスターテンプレートを作成。次にマスターテンプレートを、レジストを塗布した石英ガラス基板に押し当て、紫外線を照射してレジストを硬化させ、その後、マスターテンプレートを外す。そして、この基板にエッチングを施し、レジストを除去することで、マスターテンプレートのパターンを忠実に転写したレプリカテンプレートが完成するというものとなっている。
同技術を活用することで、1枚のマスターテンプレートからレプリカテンプレートを複数製造することが可能となり、ナノインプリントにおける製造コストを低減することが可能となる。
なお、DNPでは今後、同装置を用いてテンプレート複製技術の実用化のための開発を進め、2012年度の次世代半導体の量産開始に向けて、2011年度末までにテンプレート複製技術の確立を目指すとするほか、半導体メーカーへのサンプル提供も開始する計画としている。