米Microsoftは12月21日 (現地時間)、HTML5仕様のラボサイト「HTML5 Labs」を開設した。Internet Explorer (IE)には実装できない、初期または安定版に到達する前のHTML5仕様に基づいた機能やサービスを、開発者コミュニティに試験提供する場になる。第一弾として同日にWebSocketsとIndexedDBのプロトタイプが公開された。

HTML5 Labsは、W3C (World Wide Web Consortium)、IETF (Internet Engineering Task Force)、ECMA (Ecma International)などの標準化団体で検討されているHTML5仕様を組み込んだプロトタイプを提供する。同ラボを管理するInteroperability Strategy GroupのJean Paoli氏は「仕様草案を形にしたものを開発者コミュニティが体験できるようにすることで、これからの標準化作業を改善するフィードバックを引き出せる。(仕様草案の)認知度が高まれば、開発シナリオに対する議論もより興味深いものになるだろう」と説明している。

MicrosoftにとってはIEとは別に、開発段階のWeb技術を試す場を設けるという狙いもある。他のブラウザベンダー、例えばGoogleやMozillaはまだ安定していない技術を開発者向けのチャンネルを通じて提供しているが、MicrosoftのIEには実験的なバージョンは存在しない。MicrosoftはIEを"メインストリーム・ブラウザ"と位置付けており、"Internet Explorer"という名称の製品ではあらゆるリスクを排除する意向だ。IE開発を率いるDean Hachamovitch氏は「IE9では、メインストリームに向かっているHTML5技術、開発者がすでに用いている実際のWebパターンのサポートを提供する」と述べている。

現在プロトタイプとして公開されているWebSocketsは、双方向・全二重の複雑な通信チャネルをTCPソケットで繋ぐように簡素化する技術だ。IndexedDBはブラウザで大量の構造化データを扱えるようにし、インデックスを用いた高速検索を実現する。これらはWebコミュニティに恩恵をもたらす技術であると認められながら、現時点で非常に不安定であることから最初のプロトタイプに選ばれたという。「プロトタイプを試し、APIが有効かといった意見をわれわれや他のワーキンググループ参加者にフィードバックしてほしい」とPaoli氏は呼びかけている。