ロームは12月21日、低損失・高耐圧な次世代パワーデバイス材料として期待されているSiCを使用したDMOSFETの開発を完了、12月よりカスタム品として量産を開始したことを発表した。

同製品は、SiC結晶欠陥による信頼性の課題や高温プロセスに起因した特性バラつきなど、SiC製トランジスタの量産化に向けての障害となっていた問題点を、独自の電界緩和構造の開発やSiC特有の1700℃という高温プロセスでの特性劣化を抑制する技術などの各種プロセス技術および、独自のスクリーニング法を開発することで信頼性を確保するなどにより解決したもので、エアコン、太陽電池、産業機器などで電力変換を行うインバータ、コンバータ向けをはじめ、幅広い応用が可能だと同社では説明している。

SiとSiCのMOSFETの特性比較

耐圧600Vでオン抵抗が0.4Ωと同耐圧・同チップサイズのシリコンのDMOSFETと比較して10分の1以下の低オン抵抗を実現したほか、スイッチング時間をオン抵抗の低いSiのIGBTと比較して約5分の1以下に短縮、これまでのSiデバイスでは実現できなかった高速と低オン抵抗を同時に実現した。これにより、インバータ、コンバータなどに採用した場合、損失の低減だけでなく、高周波化にともない周辺部品の小型化が可能なことから、実装面積の縮小や周辺部品のコストダウンも実現できるようになる。

また、Siトランジスタと比較して、高温時の抵抗上昇が少ないため、高出力時の導通損失が小さいという点でも優位性があり、すでに同社が販売を開始しているSiC-SBDと組み合わせて電源回路を構成することで、より低消費電力で小型なシステムを開発することが可能となるとしている。

なおロームでは、SiCデバイス事業を次世代半導体事業の中核技術の1つとして位置付けており、DMOSFETやSBDのさらなる高耐圧化、大電流化製品のラインアップの強化のほか、トレンチ構造MOSFETやSiCデバイスを搭載したIPM(インテリジェント・パワー・モジュール)など SiC関連製品のラインアップ拡充、量産化を進めていくとしており、2011年夏には汎用品としての今回のDMOSFETを出荷する計画しているほか、その後1年ほどで耐圧600Vから1200V、電流5Aから20Aの範囲でラインアップを拡大していく予定としている。