工業用電子部品のカタログ販売などを手がけるアールエスコンポーネンツ(RSコンポーネンツ)。同社はRSグループの1社として持ち株会社Electrocomponentsの下、全世界160以上の国や地域において、研究開発、試作、保守、メンテナンス分野における電子部品、半導体などの産業・工業用部品の販売を行っている。そんな同社の現在と、アジア・太平洋地域および日本を取り巻く状況などを、ElectrocomponentsのGroup Chief ExecutiveであるIan Mason氏に話を聞いた。
中央が今回のインタビューに応じてくれたElectrocomponentsのGroup Chief ExecutiveであるIan Mason氏。右が日本法人アールエスコンポーネンツの代表取締役社長である兵頭克邦氏、左がRS Components,Rigional General Manager,Asia PacificのRichard Huxley氏 |
2010年度上半期は前年同期比で2桁の成長を達成
2010年9月末に終えた同社の上半期決算の概況を見ると、グループ全体で前年同期比24%増と2桁の成長を達成している。「特にeコマースが好調で、同分野だけを見ると前年同期比42%の成長であり、売り上げに占める割合も全体の48%を占めるに至った」(Mason氏)と、Webサイトでの販売が伸びていることを強調する。
高い成長率を示すネット通販ビジネスだが、「中でも中国の伸びは大きいが、それ以上に日本が一番伸びている」(同)とする。その成長率は前年同期比46%。「2010年の日本の経済状況はあまり良いとは言えないが、我々はこの10年、それでも堅調に成長するための努力を行ってきた」(同)とし、日本法人であるRSコンポーネンツの代表取締役社長である兵頭克邦氏を筆頭に、すべての社員がすばらしい活躍をしてくれているとの賛辞を送る。
どうして市場が低迷する今の日本でも成長が可能だったのか。その問いについて同氏は「ハイサービスレベル・ディストリビューション」という言葉を答えとする。同社は、平日18時までの注文であれば、翌日に届けることを基本サービスとしている。「競合会社、特に規模の小さいディストリビュータは注文リストに製品が記載されていても在庫がなかったり、別の地域の拠点にあったりということが多い。我々は常に在庫を保有し、1個、すぐに欲しい、という要望にも応えられる体制を構築している」ということが強みとなっているという。
また、そうした同社の配送サービスに加えて、ネットを介してのエレクトロニクス部品の販売という形態が他の国に比べて上手くいっていることが挙げられる。「日本におけるeコマースの売り上げ比率は全体の70%程度」(同)であるほか、9月より開始したエンジニア向けコミュニティサイト「Design Spark」も効果を発揮していることも要因となっているとする。
ネット通販との親和性が高い日本
同サイトでは、回路図/PCBレイアウト用ツール「DesignSpark PCB」が提供されているが、開始3カ月程度で「我々の期待を大きく上回った。当初、18カ月をめどにしていた目標のダウンロード数はすでに達成しており、多くのフィードバックも入ってきている。確かに全世界で反響はあったが、日本では特に顕著。こうした動きに合わせてeコマースをより使いやすくする機能などを追加していく」と日本がこうしたネット販売の牽引役であるとする。
では何故、日本人は同社のこうした取り組みを受け入れたのか。同氏はこの問いに対し、2つの理由があるとする。1つ目は、「我々よりも規模の小さいディストリビュータがリーマンショックの影響を受け弱体化したこと」であり、景気後退時に在庫を保持しきれず手放し、その後、その状況から脱しきれていないとの見方だ。2つ目は、「我々が、電子部品やデザインなどエンジニアに向けた品揃えの拡充を怠らなかったこと」とする。
また、利用者側からの見方として、「全世界で同様のアプローチをしている。もちろん高い伸びを示している中国もだ。だが、中国は日本に比べてeコマースの浸透率が低い。日本はネット通販に慣れ親しんでいるという下地があり、こうした心理的障壁が少ないのも要因になっていると思う」と日本でのネット通販の浸透率の高さが受け入れられた要因とする。
「日本のユーザーへどうアプローチしたらよいか、一番は何かを常に考えている」とのことであり、その中において、我々は紙のカタログもやっているが、Webビジネスでは毎日値段の変更ができたり、Design Sparkのような新機能を搭載することができる。そうした意味では、日本のネットビジネスの成長を分析し、全世界にフィードバックすることを進めているという。
当然、グループのCEOである立場からは「全世界での成長を目指す」ことが目標であり、そのために同社が手がける「エレクトロニクス」「eコマース」「メンテナンス(MRO)」のそれぞれの事業において製品を増やしていくほか、「現状は確かに好調だ。2011年に関してもサプライヤサイドの懸念はあるが、我々としてはない。ただし、次に何が起きるか、何が必要かは常に見極める目を持つことが重要だ。例えば、eコマースの比率が増えた際の紙カタログのあり方や、マーケティング手法など。そうしたことも含めて、将来、どういった変革が求められるのかを見極めるのが私の役割」と将来を見据えたビジョンを示す。
また、同社に製品を提供するサプライヤや、その製品を購入するユーザーについては、「すばらしいサプライヤとユーザーに囲まれていると思う。我々が成長できるのも、サプライヤが製品を供給してくれ、ユーザーが購入してくれるから。高い成長率を示すことで、日本の大手ベンダなどからも関心を寄せてもらっている。我々はグローバルのディストリビュータ。日本以外の地域でも同様のサービスを提供している。サポートを含めてグローバルで支援できるので、もっと活用してもらえればと思っている」とし、「我々は1人ひとりにぴったりの製品を提供することを目標としている。ぜひ、一度使ってみてもらい、その体験をフィードバックしてくれれば」と、まだ使用したことのない人へのメッセージも含めたコメントを述べてくれた。