東北大学大学院 生命科学研究科 膜輸送機構解析分野の福田光則教授とコーセーは、新たな美白へのアプローチとして、肌内部におけるメラニン色素の輸送過程に関する共同研究の成果として、色素生成細胞(メラノサイト)内に存在し、メラニン色素を内包する小胞(メラノソーム)の輸送を、「サンペンズエキス」が阻害し、ケラチノサイトへのメラニン色素の移行・蓄積を抑えることを発見したことを明らかにした。

培養メラノサイトの顕微鏡写真。左が無添加、右が培地にサンペンズエキスを添加。左側はメラノソームが樹状突起に分布するのに対し、右側の写真は、メラノソームが、細胞の中心にある核周辺へ集まっているのが見える

化粧品業界はこれまで、シミの原因となる肌の色素生成メカニズムを解明するとともに、シミを防ぐさまざまなアプローチを行ってきた。これら従来のアプローチは、メラニン合成酵素であるチロシナーゼの活性を抑制するなど、主にメラニン合成までをターゲットとした研究が中心であったが、近年ではさらなる美白効果を得るために、異なるプロセスからのアプローチを組み合わせることが試みられており、特に表皮細胞(ケラチノサイト)内に存在するメラニン色素量をコントロールする方法についての研究が盛んに行われてきた。

肌内部におけるシミの形成メカニズム

同研究チームでは、メラノソームの輸送メカニズムに着目、その輸送を阻害する美白素材の探索を行ってきており、今回、健康茶などとしても用いられるサンペンズ(学名:Cassia mimosoides L.、別名:リュウキュウカワラケツメイ)の50%エタノール抽出液「サンペンズエキス」に、メラノソームの輸送を阻害する効果を発見した。

三次元皮膚モデルの顕微鏡写真。左が無添加、右がサンペンズエキスを添加。茶色に見えるのは蓄積されたメラニン

メラノソームはメラノサイトの細胞膜へつなぎとめられた後に、ケラチノサイトへと受け渡されるが、「サンペンズエキス」はメラノソームが細胞膜へ結合するのに不可欠な複数の輸送関連タンパク質の量を減少させることで、メラノソームの輸送を阻害することができ、研究により、実際に、ケラチノサイトへのメラニンの移行・蓄積が抑えられることをつきとめた。

メラノソーム輸送に関わるタンパク質

なお、コーセーでは、今後、同エキスの効果を美白製品へと応用展開していく予定としている。