米MicrosoftがSNS大手の米Facebookを買収しようとしていたことが明らかになった。フランス・パリで12月8日と9日に開催されたイベント「Le Web 2010」でMicrosoftの幹部がパネルセッションで事実を認めた。パネルではこのほかにも、米Googleと楽天に買収された仏PriceMinisterが参加、買収に関する興味深い話が出てきた。
Le Webの2日目、「どうやって買収されるか(How to get acquired)」をテーマとしたパネルが開かれた。参加者は、Microsoftの上級戦略 買収ディレクター Fritz Lanman氏、GoogleのEMEA担当コーポレート開発 Anil Hansjee氏、PriceMinister(現 楽天)の創業者兼CEO Pierre Kosciusko-Morizet氏(仏エコロジー・持続可能開発・運輸・住宅大臣、Nathalie Kosciusko-Morizet氏の弟)。モデレータは、イベントオーガナイザーのLoic Le Meur氏(フランスの起業家、Le Web設立者)が務めた。
Lanman氏は、「Facebookを買収したかったのか?」というLe Meur氏の質問に答えて、「買収したいと思った。だがFacebookは売り出されていなかった」と答えた。続けてLe Meur氏が、「買収しようとしたのか?」と突っ込むと、「Facebookを買収しようとした」と認めた。
Lanman氏によると、2007年時点でFacebookの評価額は150億ドル、結局Yahoo!と同様に、"買収しないが深い技術提携を組む"という結論に達したという。MicrosoftとFacebookは同年10月、Microsoftが2億4,000万ドルを出資すること、既存の広告配信提携拡大を発表している。
当時の交渉について詳しく聞かれたLanman氏は、Facebookについて、「成長中で、昔のMicrosoftと同じような特徴を持っていた。若く、野心とビジョンを持った創業者(Mark Zuckerberg氏)、強いエンジニア社風、プラットフォームビジョンがあった」と表現した。
また、Microsoftの時価総額は現在2,000億 - 2,500億ドルで、FacebookはMicrosoftのレベルに「達することができるだろう」とも語った。
Lanman氏はMicrosoftの買収戦略について、「2005年から2008年は2種類の取引を行った」と説明した。1つ目は、小規模の取引で、特定の製品を進化させることを目的に製品、チーム、IPを取得するもの。2つ目は大規模な取引で、業界のシフトに合わせるためのものという。その例として紹介したのが、難航したYahoo!買収交渉だ。「戦略を前進させるための買収」とし、「検索市場に参入したかった」と振り返った。「オンライン広告で規模が必要だと感じていた。規模なしには広告主を得られず、広告のインベントリを構築できない。(Yahoo!とMSが合体して)検索業界で企業が3社あるうちの2番目と3番目が協業することは、意味を成すと思った」と述べた。
一方、活発に買収を進めているGoogleのHansjee氏は、「2010年は約40社を買収することになるだろう」と述べた。昨年は買収のペースを落としていたが、買収は戦略を一定部分を高速化できると判断し、フォーカスしているという。最近のものとして、英ケンブリッジの音声合成技術Phonetic Arts買収を紹介、「深い技術を持つ企業で、エンジニアリングとIPを取得した。典型的な取引だ」と述べた。だが、買収交渉が決裂したとといわれている米Grouponについての話はなかった。
PriceMinisterのKosciusko-Morizet氏は、楽天への売却について、「日本の企業に買収されることを選んだ」と述べた。「日本企業に売却するほうが面白いと思った」「(多くの米国企業と比較しながら)、日本の文化は信頼が大切で、子会社を(信頼して)自律的に運営させる」と理由を語った。その後会場から、「より高い買収額を出す米国企業に買収されようとは思わなかったのか?」という質問が出ると、「楽天は欧州にプレゼンスがなく、(買収交渉があった)米国企業はすでに欧州にプレゼンスがあった。楽天の方がわれわれを戦略的と見ていた」といった旨を語った。
Kosciusko-Morizet氏は当初から5年、企業の年商が4,000万ユーロを上限と決めていたという。「それ以上になると、どうやって使っていいかわからない」とも。以前から投資に興味があり、現在約15社に投資しているという。