Siemensの日本法人であるシーメンス・ジャパンの産業オートメーション&ドライブテクノロジー事業本部は12月9日、複数の制御設計アプリケーションソフトウェアで作成される情報を集約し、ダイナミックに管理する仕組みを実現することが可能な統合エンジニアリングフレームワーク「TIAポータル」を開発、それを搭載した自社の設計支援ツールを2011年2月より販売することを発表した。

Siemensは、制御システム全体の視点から設計や製造の各プロセスを最適化するソリューションとして「TIA(Totally Integrated Automation)コンセプト」を提唱している。今回発表されたTIAポータルでは、従来では難しかった制御設計に共通の情報と機能を横断的に統合した開発環境を提供することが可能となる。

TIAポータルを搭載した設計支援ツールは、PLC設計支援ツール「SIMTIC STEP 7 V11」およびHMI(Human Machine Interface)設計支援ツール「SIMTIC WinCC V11」の2つで、いずれもTIAポータルによる3つの特長が付加されているという。

最終製品の高機能化により設計/製造現場の複雑さも増大している。TIAポータルはそれを解決するフレームワークと同社では説明している

1つ目は「Intuitive(簡単操作)」。設計者が見たい情報や機能にアクセスしやすくするための「ポータル画面」と具体的な設計作業を行う「プロジェクト画面」の2画面で構成される。ポータル画面は設計作業を開始するときの入り口となる画面で、作業フローに基づいたメニュー構成とナビゲーション機能により、初めての設計者でも求める情報や機能へ容易にたどり着ける工夫が施されている。

TIAポータルが提供する3つの特長

また、プロジェクト画面は、設計制御の横断的な共通機能や制御機器固有の機能を実行する作業ウィンドウであり、設計情報はプロジェクトファイルとして階層的に一元管理でき、複数の異なる作業ウィンドウを開きながら編集や保存、制御機器のオンラインモニタなどが可能となる。

2つ目は「Efficient(設計効率化)」。制御設計に共通の情報と機能を横断的に統合しており、制御システムのネットワーク構成やハードウェア機器設定を支援する「ネットワーク構成とハードウェア機器設定」により、情報系から制御系まで複数の異なるネットワークと機器構成を同一画面上に表示することが可能なほか、オンラインでは通信モニタやネットワークの診断が可能となる。

また、「制御信号や設備データのタグ情報の一元管理」により、PLCプログラム編集で一度使用したPLCタグは、HMIスクリーン画面へドラッグ&ドロップ操作で割り当てることが可能ながら、HMIタグの名称や参照元アドレスの入力は不要となっている。加えて、HMIタグの参照先のPLCタグに変更が生じた場合、HMIタグも自動的に更新され、手作業での参照元アドレス変更が不要なほか、クロスレファレンス機能により、複数の機器に点在するタグ情報を一括表示でき、1クリックで参照先の作業ウィンドウを表示することが可能となっている。

さらに、「プロジェクト設計を支援する共通ライブラリ機能」により、制御機器の各種設計情報をソフトウェア部品として登録でき、同一プロジェクト内や異なるプロジェクト間での部品の再利用が可能となり設計の効率化ができるようになる。

3つ目は「Future-proof(継承性確保)」。同社製品の共通プラットフォームとして用いることが可能なため、幅広い制御機器に対応することが可能であり、現行ユーザーのPLCプログラム資産やHMIスクリーン資産すべてを統合エンジニアリングフレームワークで利用することが可能となる。

また、PLC、HMIパネル、SCADAに加え、今後はインバータなどのドライブ製品に対しても順次対応が図られていく予定としている。

これらの機能を活用することで、カスタマは設計効率の短縮が可能となると同社では説明しており、設計エンジニアリングの効率化によるより少ない作業で短期間の製品開発が可能となるとする。

特に日本においては、事業拡大を目指し海外市場へのシフトが進んでおり、そうした市場でのニーズにいち早く対応することが求められている。必然的に開発速度もさらなる向上が求められることとなり、加えて機能向上による製品の複雑化も求められることとなり、設計者の負担は増すばかりとなる。そうした状況において、1つのフレームワーク上で共通のデータを活用することで、作業効率の向上を図ることが可能となると同社では説明しており、日本における存在感の強化を図っていき、同社がターゲットとする半導体、自動車、家電およびそれらの製造装置を手がける各種カスタマに向けて事業拡大ができるような手助けをしていければとしている。