Salesforce.comは12月8日(現地時間)、RubyのPaaSベンダーであるHerokuを2億1,200万ドルで買収することを発表した。米国サンフランシスコで開催中の年次ユーザー&デベロッパーカンファレンス「Dreamforce 2010」の基調講演には、HerokuのCEOであるByron Sebastian氏が登場した。「Heroku」はそのままSalesforce.comの新たなRuby向けのクラウドプラットフォームとなる。

前日の基調講演で予告していたとおり、Salesforce.comの会長兼CEOを務めるMarc Benioff氏は新たなクラウドサービスを2つ発表した。その1つが「Heroku」だ。

同氏はForce.com上でJavaアプリケーションを稼働させるためのプラットフォーム「VMforce」の開発を行っている際、さらにプラットフォームを拡張するにあたり、Rubyを追加することを思いついたと語った。

そして、TwitterやGrouponといったサイトの構築に利用されているRubyこそ「真のクラウドのための言語」と同氏。

探し当てたHerokuという企業が「自分たちができないことを実現してくれ、サービスとしてRubyを提供することをわかっている人たち」だったことから、同社の買収に着手したという。

Herokuは2007年に創立されたベンダーで、同社のプラットフォーム上ではすでに10万以上のアプリケーションが稼働している。Sebastian氏は「Salesforce.comとわれわれが一緒になったことで、これまでは信頼性とオープンソースソフトウェアのメリットは二者択一だったが、同時に手に入れられるようになる」と述べた。

左から、Salesforce.com会長兼CEO Marc Benioff氏、Heroku CEO Byron Sebastian氏

8つ目の新たなクラウドサービスとして紹介されたのが、Force.com上でBMC SoftwareのITサービスマネジメント製品を稼働させるためのプラットフォーム「RemedyForce」だ。

BMCは昨年、Salesforceと提携を結んでForce.com上で同社の製品を稼働させることを発表していたが、今回はその内容を拡大するもの。Benioff氏は「ユーザーからForce.comに欲しいという声が最も多いアプリケーションはRemedyシリーズ」と説明した。

基調講演に登壇したBMC SoftwareのCEOを務めるBob Beaucham氏は、「ITILはITシステムの運用にかかるコストと時間を削減するために、不可欠なもの。われわれの完成した技術をForce.com上で提供できるのは喜ばしい。これはクラウドの進化をもたらすはずだ」と述べた。

左から、Marc Benioff氏、BMC Software CEO Bob Beaucham氏

8つにまで増えたSalesforceのクラウドサービス

Marketing & PlatformのEVPであるGeorge Hu氏からは、 VMforceやHerokuを含むForce.comの最新版「Force.com 2」についての説明が行われた。

Salesforce.com Marketing & PlatformのEVP George Hu氏

Force.com 2は、クラシックなForce.com「Appforce」、Webサイト構築のためのプラットフォーム「Siteforce」、「VMforce」、「Heroku」、ISVがマルチテナント型のクラウドアプリケーションを構築・提供するためのプラットフォーム「ISVforce」という5つのプラットフォームから構成される。

同氏は「Force.com 2はCloud 2のためのプラットフォームで、アプリケーション構築の高速性とオープン性を提供する」と説明した。

VMforceとHerokuが加わってJavaとRubyがサポートされた「Force.com 2」

Force.com 2によってもたらされるメリット

基調講演後のランチミーティングでは、「Salesforceが今後10年プラットフォームの企業になっていくために、JavaとRubyは必要な言語と判断した。Rubyを成功するための言語として選んだのは"博打"と一緒」と話した同氏。

これからプラットフォームにおいてもイニシアチブをとっていこうとする同社は、JavaとRubyを新たな武器に選んだようだ。同社がJavaデベロッパーとRubyデベロッパーをどのようにしてクラウドコンピューティングに導くのか、期待したい。