SAPジャパンは12月7日、インメモリソフトウェア「High Performance Analytic Appliance(SAP HANA)」の国内提供開始を発表した。インメモリで動作するBI/分析のためのソフトウェアで、Intel Xeon 7500プロセッサに最適化されたハードウェアに搭載されたアプライアンスの形態で提供される。SAPジャパンの代表取締役社長 ギャレット・イルグ氏は「SAP HANAは4,500億件のデータから数秒で検索可能な破壊的なテクノロジ。これまでの業務アプリケーションのあり方を根本から変える、"faster, better, cheaper(より速く、より良く、より安く)"を実現したイノベーション。企業のTCO削減とROIを劇的に向上させ、ITの使い方を土台から変えるパワーをもつ」と強い自信を見せる。
SAP HANAは5月に行われた同社の年次イベント「SAPPHIRE」で発表されたインメモリベースのテクノロジで、「更新系と情報系の処理をほとんど同時に行う - すなわちオペレーションと意思決定が同時に実現することを可能にする"リアルなリアルタイムソリューション"」(SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部長 福田譲氏)を謳っている。ユーザは、情報分析や意思決定に必要な情報を、データソースが何であろうと、また使用しているデバイスが何であろうと、瞬時に手にすることができるという。たとえば、大口顧客からある商品の15%値引きを要求された場合、その要求を受け入れる(あるいは拒否する)ことでどんな影響が出るかを即時に割り出し、迅速な意思決定を可能にする。「分析に必要なデータがデータウェアハウス上にあるのか、Web上にあるのか、会社のPCを使っているのか、それとも外出先のモバイルデバイスで参照しているのか - SAP HANAはそういったことをいっさい問わない。バッチ処理とか、人力による加工/集計といった時間がかかっていた作業を数秒に縮める、"速い"を前提にしたアプリケーション。企業アプリケーションのあらゆる制約を取り除き、SAP HANAの"速さ"が業務のあり方を確実に変える」(福田氏)
「顧客はスタックではなくソリューションを求めている」というのがSAPの業務アプリケーションに対する考え方。インメモリコンピューティングはこれを端的に実現する |
ハードディスクの上に環境を構築してその上でソフトを走らせて、分散したデータは手作業で集める……という煩雑なしくみを根本から変えるのがインメモリ技術。大量のデータをメモリ上に集約できるハードウェア技術の向上により実現した |
SAPがここ数年注力してきたインメモリエンジンのテクノロジに加え、BusinessObjectsやSybaseなど、SAPが買収で手にしてきたBI、リアルタイム同期、モバイル技術などの資産を活かしたエンジニアリングの結晶がSAP HANAだ。Intelとの協同作業により、Xeon 7500プロセッサを積んだハードウェア上で最適化が施されており、当面はXeon 7500を搭載したHewlett-PackardおよびIBMのハードウェア(RACサーバ)と一体化された形態で提供される。また、SAP HANAは"オープンなAPI"を掲げており、「HANA上で動く独自アプリケーションやサードパーティ製のアプリケーションの開発も可能」としている。
SAPは新CEO体制になってから「On Demand, On Premise, On Deveice」というメッセージをワールドワイドで発信しつづけてており、それを支える技術としてインメモリエンジンとモバイルを挙げていた。SAP HANAはこれを具現化した最初のソリューションといえる。
SAP HANAの開発パートナーとして発表会場に登場したインテル 代表取締役社長 吉田和正氏は「SAPとIntelは10年以上にわたって協業してきた互いにとっての良いパートナー。古いハードウェアを使い続けるリスクは企業にとって大きい。SAP HANAのような革新的なアーキテクチャがもたらすメリットを多くの企業に体感して欲しい。Xeon 7500により劇的に向上したパフォーマンスが、業務アプリケーションにどういう世界をもたらすのか、非常に楽しみ」とエンドースメントを寄せた。