パナソニックはベルギーIMECとの共同開発により、振動部からのエネルギー損失が少ないねじり振動モードで振動する単結晶シリコン(Si)の三角柱形状の振動部と、これをSiGe薄膜で真空封止するウェハレベルパッケージ技術を開発。同技術を用いて、最高クラスのQ値と低電圧駆動を可能とするMEMS共振器を実現したことを明らかにした。2010年12月6日に米サンフランシスコで開催されている半導体デバイスに関する国際学会「IEDM 2010」で発表された。

今回、同社らが開発したMEMS共振器技術は、単結晶Siの異方性エッチングにより形成した三角柱形状の振動部と、ねじりモーメントを効率的に与える独自の電極配置、振動エネルギー損失が小さいねじり振動モードを採用することで、共振周波数20MHz帯において業界最高クラスのQ値22万のMEMS共振器を実現。

チップサイズは0.4mm×0.4mmまで小型化が可能なほか、振動部と電極とのギャップを130nmまで狭小化することで、1.8Vでの低電圧駆動が可能となり、発振回路ICで従来必要であった昇圧回路を不要とすることが可能だ。

さらに、低温プロセスに対応したSiGe薄膜を用いたウェハレベル薄膜真空パッケージ技術により、振動部の機械的振動が阻害されないように形成された空洞部内の圧力を10Pa以下で真空保持し、-40℃~+140℃の温度範囲で安定した共振器特性を実現した。また、空洞部サイズを極小化することで、4μm厚のSiGe薄膜で10MPaの耐圧性を実現、樹脂モールド工法にも対応可能とした。

ねじり振動モードの模式図とMEMS共振器の断面構造

なお、同社では同技術は、家電機器や車載機器などさまざまな機器で使用されるタイミングデバイスの小型化、低消費電力化に貢献するものとし、将来的には、さらに厳しい周波数安定度が要求される通信機器用途や、共振周波数変化を利用した高感度力学量センサなどへの展開も期待できるとしている。