アドビ システムズのビデオ制作用アプリケーション「Adobe Premiere Pro CS5」の新機能を数回に渡り徹底紹介していく本レビュー。最終回となる今回は、HP製のワークステーション「Z800」を用いて行った「Adobe PremierePro CS5」の動作性能の検証結果を紹介していく。
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なお、これまでに紹介してきた「Adobe Premiere Pro CS5」のレビューは以下の通り。
オンライン編集ツールへと進化したCS5
前回行った実験の結果を表にまとめ、いくつかの項目でのCPUの動作状態(パフォーマンスモニタ)を抜き出してみた。
PremierePro CS5 OS:Windows7 Pro (64bit)、CPU:Xeon X5570×2、Memory:12GB |
上図はHDVとAVCHD各3分間の素材について、再生時のコマ落ち状態とレンダリング時間を測定したもの。右側のCS4ではエフェクトを加えた際のプレビュー再生がほぼ不可能で、レンダリングにも信じられないくらいの時間がかかるが、左側のCS5では現実的なエフェクトの追加でも、CPU使用率が15%程度で余裕があり、ほとんどストレスなくプレビューできる。圧縮処理が重く、PCで扱いにくいとされるAVCHDでも、HDVと同程度に編集できるのは驚きである。
画面2 |
PremierePro CS4+Core2 Quadの環境で、AVCHD素材に編集設定(PinP+カラコレ+スーパー)したときのプレビュー状態。CPU使用率は90%近くに達し、デスクトップ上では1~2秒で1コマくらいしか映像が動かなくなってしまう |
画面3 |
PremierePro CS5+Xeon X5570×2によるAVCHD素材のプレビュー。HT機能をONにしているので、見かけ上のスレッド数は16になる。パフォーマンスモニタにおけるCPU使用率は10%以下であり、安定した再生が可能となる |
画面5 |
PremierePro CS5+Xeon X5570×2の環境で、AVCHD素材に編集設定(PinP+カラコレ+スーパー)したときのプレビュー状態。パフォーマンスモニタにおけるCPU使用率は15%程度であり、秒間30コマのプレビューを余裕でこなしている |
CS4の環境では、HDVもAVCHDも、単純なプレイバックならデスクトップ上ではなんとか動作できたので、カット編集は行えた。しかし少しでもエフェクトを加えると、途端に動きが悪くなり、プレビューのためにレンダリングが必要となった。しかもその待ち時間が半端ではなく、HDVで素材尺の10倍強、AVCHDでは20~40倍となり、自由な編集ができる状態とはほど遠かった。つまりCS4はHD編集のオフライン編集ツールとしては使えるが、オンライン編集は無理だったのである。
その点CS5になると、CPU使用率は10%以下であり、余裕でプレイバックしていることが画面3から判る。エフェクトを加えた場合は、HDVなら余裕で、処理が重いAVCHDでもデスクトップ上なら滑らかな再生が確保できる状態であり、オンライン編集がストレスなく行える性能といえる。筆者の経験上は、ちょうどWindows 2000、Pentium3 600MHzの環境でDV編集をしていた頃の感覚となる。実用的なエフェクトを加えた場合のレンダリング時間は実尺よりかかってしまうが、画面7でもわかるとおり、Mercury Playback Engineが働いてCPU性能が引き出されており、CS4の環境と比べると、信じられないくらいの短時間で終了する。
リニア編集の快適な動作と比べるとまだ十分とはいえないが、これならVP制作などの業務で使えるだろう。なによりもHDVとAVCHDを同じ感覚で扱えるというのは、大きな進歩といえるのではないだろうか。
もちろんこれはCS5の性能向上のみによるのではなく、ベースマシンのスペックアップ、OSの64bit化、新たなコマンドセットの実装など、あらゆる環境が総合的にグレードアップされた結果であるが、CS5の導入には、事実上マシン環境ごと一新することが要求されるため、これがCS5の性能だと大雑把に考えてよいだろう。
これまでAdobe PremierePro CS5について複数回に分けて紹介してきたが、結論を申し上げると、導入には若干の投資と勇気?が必要となる。しかし導入後は、従来では考えられなかった快適なHD編集の環境が整う、ということになろう。SOHOや個人事業者の業務はまだSD制作のDVD納品が多いと思われるが、顧客からBlu-ray納品の要求が来たとしても、その仕事を受けるためのツールがAdobe CS5+ハイパワーマシンという形で市場に存在するという現実は、我々映像制作者にとって心強い支えとなるはずである。