日本アイ・ビー・エム 代表取締役社長 橋本孝之氏

日本アイ・ビー・エムは11月29日、幕張データセンターにグローバルで統合化されたパブリッククラウド・サービス基盤を構築し、新たなパブリッククラウド・サービスを4種類提供すると発表した。

代表取締役社長 橋本孝之氏は「今年はPOWER7など、大きな発表がいくつもあったが、製品の発表会に出席したのは初めて」として、あらためてクラウド関連のビジネスが同社にとって重要であるかをアピールした。

同氏によると、クラウド関連のビジネスは非常に好調で、昨年の10月以来、四半期ごとに売上が倍増しているという。同社はすでに16社の事例を公表しており、「クラウドを導入したユーザー企業はTCO削減にとどまらず、"資産の変動費化"、"ビジネススピードの向上"、"セキュリティ・ガバナンスの向上"、"新規ビジネスの創出"といったメリットを得ている」と、同氏は説明した。

日本アイ・ビー・エムによるクラウドの導入例

今回発表されたサービスは、「IBM Smart Business 開発&テスト・クラウド・サービス」、「IBM Smart Business デスクトップ・クラウド・サービス」、「IBMクラウド・アプリケーション開発サービス」、「IBMクラウド・テスト・サービス」の4種類。これらのサービスは幕張のデータセンターに構築される世界共通のパブリッククラウド・サービス基盤で提供される。

日本アイ・ビー・エムのパブリッククラウド・サービスのラインアップ

日本アイ・ビー・エム 執行役員クラウド・コンピューティング事業担当 吉崎敏文氏

執行役員クラウド・コンピューティング事業担当の吉崎敏文氏は、「パブリッククラウド・サービス基盤は"仮想インフラ"、"運用管理"、"ビジネス管理"、"セキュリティ"から構成されるが、いわば当社のテクノロジーの結集」と説明した。

同サービスはすでに米国では5月、ドイツでは6月に提供が開始されているが、幕張のデータセンターでの提供は来年3月から開始される。同サービスを利用する際は、仮想サーバごとに世界各地のクラウド・データセンターを選択することが可能だ。

IBM Smart Business 開発&テスト・クラウド・サービスでは、仮想CPU、仮想メモリ、仮想ディスク、ソフトなど必要なIT資源を、メニューから選択するだけの簡単な操作により10分程度で仮想マシンを利用することができる。雛形として、開発ツール「Rational」、Webアプリケーション基盤「WebSphere」、データベース管理ソフト「DB2」など同社のミドルウェア群が用意されている。

利用料金は、仮想CPU(1.25GHz)が1個、仮想メモリが2GB、仮想ディスクが60GB、Windows Server 2003 R2/2008 R1,R2という内容で1時間当たり10円からとなっている。米国、ドイツのデータセンターで英語のインタフェースを利用する場合は同日から利用可能だが、幕張のデータセンターと日本語のインタフェースの利用は来年3月からとなる。

IBM Smart Business 開発&テスト・クラウド・サービスの概要

IBM Smart Business デスクトップ・クラウド・サービスは、PC上の業務環境を仮想クライアント環境として提供する。提供形態は、インターネットVPNまたは専用線経由で顧客の社内ネットワークの中で同社のデータセンターを利用するパブリッククラウド型と、顧客のデータセンター内に設置して利用する形態(大規模採用の場合)の2種類がある。5年契約の場合、1仮想クライアント当たり月額2,960円で利用可能。

IBM Smart Business デスクトップ・クラウド・サービスの概要

IBMクラウド・アプリケーション開発サービスとIBMクラウド・テスト・サービスは、クラウド環境の利用を支援するもの。

IBMクラウド・アプリケーション開発サービスでは、クラウドを活用したアプリケーション設計・開発やSaaSモデルによるサービス提供を行おうとする企業に対して、ビジネス上の要件分析、アーキテクチャー設計、組織や体制のあり方、実現へ向けてのロードマップ作成などを支援する。料金は個別見積りだが、例えば、計画フェーズは約12週間で1,500万円(税別)から提供される予定。

IBMクラウド・テスト・サービスは、実際の物理的なテスト環境をクラウド上のソフトウェア環境上にシミュレーションすることにより、物理的な環境に依存することなくテストを可能にする。加えて、パフォーマンステストを支援するサービスも用意されている。同サービスも個別見積りだが、ソフトウェア環境におけるシミュレーションの初期評価の場合、約2週間の評価期間で400万円(税別)から提供される予定。