マイクロソフトが展開する「WebsiteSpark」は、従業員数25名以下のWeb開発・制作会社を対象としたプログラムだ。WebsiteSparkでは、マイクロソフトのWebテクノロジーを活用したビジネスをバックアップし、開発環境の整備に必要なソフトウェアからサポートの提供、そして販売促進支援といった包括的な特典まで用意されている。
日本国内でWebsiteSparkが発足してから1年が経過し、マイクロソフトが目指す「中小IT企業のビジネスチャンス創出」が根付いてきた。先日開催されたイベントには、WebsiteSparkプログラムを活用し、自社のビジネスの血肉とした企業が参加。マイクロソフトが持つWebプラットフォーム技術に関して、エバンジェリストによるセミナーが行われ、パートナー企業によるWebsiteSpark活用事例なども紹介された。
MSのエバンジェリストが最新事情をセミナーで語る
講演の口火を切ったのは、マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 エバンジェリスト 奥主洋氏による「マイクロソフトWebプラットフォーム技術の最新事情 ~OSと基盤技術編~」だ。WebsiteSparkでも提供されているWindows Server 2008 R2やIISについて、Windows Server OSの進化の軌跡、Windows Server 2008で強化された管理のしやすさ、柔軟性の高さ、堅牢性の強化等について語られると、セミナー参加者たちはメモをとりつつ、真剣な面持ちで聞き入っていた。
続いて「マイクロソフトWebプラットフォーム技術の最新事情 ~開発技術とツール編~」と題し、エバンジェリスト 井上章氏が登壇。Webプラットフォーム インストーラー(Web PI)の概要や、マイクロソフトが提供しているWeb開発ツール及びテクノロジーについての解説がなされた。なかでも「Visual Studio 2010」で正式にサポートされたjQueryについては注目度も高く、コーディング時の手間を軽減させるインテリセンスやコードスニペットへの対応に関してもユーザーには大いに歓迎されているようだ。その他にもブラウザの域を超え、よりリッチなエクスペリエンスを提供することを可能とした「Silverlight 4」やWebオーサリングツール「Expression Studio 4」はもちろん、"最新テクノロジーとWeb開発"として紹介された新たなプラットフォーム「WebMatrix(Beta)」や「Visual Studio LightSwitch(Beta)」なども関心を集めていた。
WebsiteSpark活用事例から自らのビジネスチャンスを掴め
エバンジェリストたちの講演後に紹介されたのが、既にWebsiteSparkプログラムを活用し、自らのビジネスに活かしているWeb開発会社の活用事例だ。登壇したのは、「Microsoft WebsiteSpark サイト&コンテンツギャラリー」で『ベストエージェンシー賞』を獲得したUNIT SSKの大西氏に加え、オープンソース系、特にPHP関連でその手腕を発揮しているアリウープの柏岡氏だ。
「個人事業主の集まりで工務店的な動きですが……」と自己紹介してセッションをスタートさせたのはUNIT SSKの大西氏。大西氏によれば、Web PIで提供されているCMSのひとつ、DotNetNuke(ドットネットヌーク)を活用して『CSI:自転車特捜24時』やその他のWebサイトを構築しているとのこと。ASP.NETベースのCMSということでDotNetNukeを採用したとのことだが、コンテストで受賞したWebサイトのひとつ『CSI:自転車特捜24時』は、僅か2週間で制作したというから驚きだ。これだけの制作スピードを実現できたのも、WebsiteSparkで提供されるVisual Studioのポテンシャルの恩恵があったと大西氏。また、「DotNetNukeであれば、モジュールの流用やデザインの意匠を決めるスキンをカスタマイズすることによって工数を短縮するメリットがある」とその優位性を語った。
UNIT SSK 大西氏によるWebsiteSpark活用事例の紹介では、「Microsoft WebsiteSpark サイト&コンテンツギャラリー」で賞を獲得した『CSI:自転車特捜24時』をその一例として紹介 |
「どちらかと言えばオープンソース寄りなのですが……」と切り出したアリウープの柏岡氏は、「PHPユーザー会」で活躍されている業界の第一人者。PHPをコアテクノロジーに据え、Webアプリケーションの開発が主なのだそうだ。オープンソースソフトウェアのWordPressがWeb PIでインストールされるようになったのは、実は柏岡氏の影響も少なくないことが明かされるなど、思わず感嘆が漏れる。駆使する技術のオープン、クローズドに関わらず、「Webの世界は会社規模に関係なく勝負できるし、友達にもなれる」という、Web制作業界の良さをWebsiteSparkでも体現していければとのことだった。
懇親会ではWeb制作者たちの生の声が
エバンジェリストの講演、WebsiteSparkプログラムの活用事例の紹介のあとは、参加者全員での懇親会へと場所を移した。参加者もマイクロソフトの開発陣も、分け隔てなくフランクなカタチで交流する場が設けられたのは面白い試みだ。懇親会の席上で不躾ながらもWebsiteSparkプログラムを活用している企業の方に、率直な意見をうかがってみた。
まずお話をうかがったのが、エービーコンピュータの石毛文茂氏。エービーコンピュータは、従業員数は3名と小規模ながらも、全員がSEという技巧派集団。Windows Serverに抱いていたコスト高なイメージを払拭するようなプログラムが開始されたと聞き、このWebsiteSparkに参加したという。開発ツールを一揃え提供してくれる懐の深さにありがたさを感じると同時に「せっかく良い物を作り、世に送り出しているのに触れる機会が少ないのはもったいない」とも石毛氏は感じているそう。また、ASP.NET 4に対応したホスティングサーバの拡充にも期待を寄せているという。
「開発環境はMS-DOSの頃からマイクロソフト環境」というロード・ランナーの代表取締役 山下芳和氏は、「WebsiteSparkプログラムは、我々スタートアップしたばかりの企業にとってはありがたいです」と語った。オープンソースのみではなく、マイクロソフト環境下でも業務が行えるという選択肢が持てるのも自身のビジネスにおいてメリットとなったそう。現在は正社員2名での事業展開だが、オリジナルのツールを制作・販売を行うほか、地域情報サイトの運営に携わるなど、WebsiteSparkをひとつの契機に活動の幅を拡げているのが見て取れる。
プログラムを活用するためにいくつかの条件は存在するものの、そこで得られる最大のメリットは単に提供されるソフトウェアだけではない。自らのビジネスにマイクロソフトのテクノロジーを組み入れ、どのようにチャンスを掴むための武器へと変えていくか、その可能性こそがWebsiteSparkプログラムのメリットだろう。もしあなたの会社が参加条件をクリアしているのであれば、ぜひ参加してみることをお勧めしたい。