FPGAベンダActelを買収したMicrosemiは11月18日、都内で会見を開き、買収の背景およびActelが開発を行っていた65nmプロセスを採用したフラッシュFPGAの概要を公開した。

MicrosemiのVice President,Marketing and Business DevelopmentであるRich Kapusta氏

Microsemiは1960年に設立された半導体ベンダで、近年さまざまな会社の買収を行っており、アナログおよびRFデバイス、ミクスドシグナルICを中心にサブシステムなどの提供も行ってきていた。今回、Actelを買収したことにより、MicrosemiのVice President,Marketing and Business DevelopmentであるRich Kapusta氏は「新たにカスタマイズ可能なSoC技術を手に入れることができた」とし、これにより「技術的視点からは、MicrosemiがActelを買うことは意味がないと言われるが、カスタマ側からの視点で見れば、アナログのフロントエンドからマイクロコントローラのようなインテリジェンスの部分、そしてPHY、アクチュエータといった細かな部分、さらにはそれらを統合したサブシステムやプリント基板といったものまで、幅広く1社で提供できるようになったことで、それぞれの製品を調達しようと思った場合の調達負担を軽減させることが可能となる」という、技術的な補完がカスタマの開発負担の軽減に結びつくことを強調する。

幅広い製品群を4つの分野に提供していく

また、社内的にも意味があるという。というのも、Actel買収前のMicrosemiの売り上げ分野比率はセキュリティ&防衛が40%と高かった、一方のActelも航空/防衛が43%と高かったが、両社が統合されることで、「セキュリティ&防衛」が32%、「企業&商用」が22%、「航空/宇宙」が23%、「産業」が23%と、「バランスの取れたポートフォリオ構成となった」(同)とする。さらに、対象市場の規模も「トランジスタやインバータなどを中心としていた2001年では5億ドル、GaAsダイオードやRFパワーアンプなどが中心となった2006年でも8億5000万ドル程度であったが、2011年には23億ドルの市場規模だったのが、Actelの買収により対象市場が一気に拡大、41億ドルの市場へ参入することが可能となる」と、より幅広い市場へ製品を提供することが可能となることがポイントとする。

MicrosemiとActelの統合によりバランスのよいポートフォリオとなり、かつ幅広い製品提供が可能となる

MicrosemiとActelの製品を用いたアプリケーション例

65nmフラッシュプロセスをUMCと共同で開発

こうした新規市場での主力技術となるのがActelがUMCと2008年より開発を行ってきた65nmプロセスを採用したフラッシュFPGA。

従来の130nmプロセス品比で「ダイナミック電力を65%低下させることに成功しているほか、機能強化されたFlash*Freeze技術によりスタティック電力の低減も実現している」(同)と消費電力の低減が最大のポイントとするが、アーキテクチャ的にも、従来のマルチプライヤ構成から4入力LUT構成へと変更されており、まったく新しいものとなる。このため、「従来のフラッシュFPGAでは難しかった数千万ゲートクラスのFPGAも提供できるようになる」(同)とするほか、UMCの65nmプロセスをベースとした組み込みフラッシュ技術のため、「UMCの65nmプロセスに対応するサードベンダの各種IPが活用できるようになり、用途の幅を広げることが可能となる」(同)とする。

UMCの65nmプロセスをベースとした組み込みフラッシュプロセスを採用

同65nmプロセスFPGAは、少なくとも宇宙向けと地上向けの2つの製品ラインアップが用意される予定。従来より、Actelが提供してきたアンチフューズFPGAは人工衛星の制御バス分野で活用されてきたが、「一方のデータ・ペイロードは高性能が求められるためASICが利用されてきた。しかし、ASICをこうした少量生産品に適用しようとすると、コストがかさむ。性能が劇的に向上した65nmプロセス・フラッシュFPGAによりこの分野の代替が可能となる」とし、18×18ビット積和演算機能や効率性の高いDSPなどを含めて製品提供を行っていく考えを示した。

宇宙向けアプリケーション市場は2つの分野に分けられ、そのいずれもを狙っていく

低消費電力性能やセキュリティ、信頼性も向上させているという

また、宇宙向けということで気になる宇宙線への対応としても、「放射線によるトータル・ドーズ効果とシングル・イベント効果(SEE)をアンチフューズ製品と同レベルにすることに成功」とし、これにより、コンフィギュレーション・ビット・アップセットの発生がないことなどを強調する。

宇宙で活用するための宇宙線への耐性強化なども図られている

一方の地上向けも「データパスとセンサ&コントロールの2つの市場に分けられる」とするが、データパスを重視する市場については「SRAMベースのFPGAが強い分野。いまさら、そういった分野で争おうとは思わない」というわけで、従来より重視しているセンサ&コントロール分野で、フラッシュ技術を用いた統合性や高信頼性などを武器にすることで「高度に統合された製品を提供することが大きなチャンスになる」との見方を示す。

地上向けアプリケーションではSRAMベースFPGAが強いデータパス系は狙わない

なお、65nmフラッシュFPGAの最初の製品の設計は完了しており、すでに一部のカスタマで評価が開始されているとするが、詳細については2011年に入ってから改めて発表を行う予定としている。また、同社としては旧Actelが提供してきた従来製品についても継続して提供していくとするほか、65nmプロセスを採用した新たなシリーズとしての提供も行っていく計画としている。