米Xilinxは11月17日(米国時間)、100~400Gbpsおよびそれ以降の次世代通信システム向けに、最大16個の28Gbpsシリアルトランシーバを内蔵した28nmプロセス採用FPGA「Virtex-7 HT」を発表した。
次世代通信システム向けに高速信号処理を実現
Cisco Systemsの予想では、2009年から2014年にかけて世界的なIPトラフィックが年率4倍のペースで増加し、2009年の15EB/月から2014年には64EB/月になると見られている。通信機器ベンダは、こうしたトラフィック量の増大に対応するため、100~400Gbpsの次世代通信システムの導入を進めようとしているが、そのシステムを設計する際にフォームファクタと消費電力を維持しながら、フェースプレート当たりの収容帯域を最大化する必要性が求められている。
今回Xilinxが発表したVirtex-7 HTは、帯域幅拡大の要求に対応するため、日本法人ザイリンクス代表取締役社長のSam Rogan氏曰く、「高速かつ低ジッタを実現」した最先端FPGAとなっている。OIF CEI-28G仕様に準拠した28Gbpsトランシーバを4~16個搭載し、100~400Gbpsの次世代システムラインカードで用いられるCFP2やQSFP2光モジュールにインタフェースできる。また、13.1Gbpsトランシーバも24~72個搭載し、最大2.8Tbpsの2重スループットを実現する。
エンドアプリケーションに応じて3品種を提供
製品ファミリは、ロジックセルの規模に応じて3品種を用意しており、それぞれ性能に応じたエンドアプリケーションに対応する。
28万8000ロジックセルの「XCTVH290T」は、28Gbpsトランシーバを4個、13.1Gbpsトランシーバを24個搭載し、100GE OTU4ラインカードなどを想定している。次世代CFP2オプティクスを利用することで低コストのOTU4を実現する。必要に応じて柔軟なFEC/EFECを実現可能で、従来のASICと12.5Gbps、10.3125Gbps、6.25Gbpsで接続できる。
57万6000ロジックセルの「XCTVH580T」は、28Gbpsトランシーバを8個、13.1Gbpsトランシーバを48個搭載し、通信分野以外で高速な信号処理を必要とするアプリケーションを想定している。具体的には、医療用途ではCTスキャン、軍事用途ではレーダーに適用できるという。
86万4000ロジックセルの「XCTVH870T」は、28Gbpsトランシーバを16個、13.1Gbpsトランシーバを72個搭載し、400GEラインカードを想定している。業界最高の帯域幅を有し、1チップで400GEインタフェースに対応する。競合製品と比較して、2倍のロジック容量と1.3倍のメモリ帯域幅、2倍の電力効率、2.7倍の広帯域幅を実現するという。
独自アーキテクチャでノイズを低減
また、400Gシステムを実現するためには、システムレベルでいかにノイズを低減するかが鍵となるが、Xilinxでは独自のノイズ遮断アーキテクチャの導入により、デジタル回路とアナログ回路との間のアイソレーションを確保し、5dBのノイズ低減を実現する。なお、同アーキテクチャの詳細については非公開となっている。
さらにオートライブレーション機能付き信号調整回路により、プリント基板ごとに異なる伝送特性に応じて信号を補正する他、CEI-28G仕様準拠の低フェーズノイズLCタンクPLLにより低ノイズを実現する。
これらにより、システム全体で5~10dBのノイズ低減が可能となり、競合製品に対して良好な信号特性を示しているという。
エコシステムを推進
100~400Gの次世代通信システムの実現に向け、今後の展開として同社はさまざまなパートナーとのエコシステムを推進していくことを計画している。
次世代通信システムの実現には次世代インタフェースが鍵となるため、まずXilinxで100Gシステム向けFPGAを作製し、さまざまなパートナーとCFPについての協議を進める。そして最終的に次世代CFP2オプティクスを開発する。2012年頃から次世代通信システムの設計が可能となると見ている。
Xilinxでは現在、米DallasのエンジニアリングラボでVirtex-7 HTのテストチップを稼動させており、2012年の前半に出荷を予定している。なお、Virtex-7をサポートするISE Design Suiteソフトウェアツールはすでに供給を開始している。