ルネサス エレクトロニクスは11月17日、8/16ビットマイコンの既存シリーズ「78K」および「R8C」を融合、発展させた新マイコン「RL78」ファミリの開発を完了したことを発表した。同ファミリは2011年1月より順次サンプル出荷が開始される予定。

新マイコンファミリ「RL78」の第1弾製品となる「RL78/G12」および「RL78/G13」

ルネサス エレクトロニクス執行役員 MCU事業本部長の水垣重生氏

同ファミリの開発の背景について、同社執行役員 MCU事業本部長の水垣重生氏は、「ローエンドマイコンに求められるカスタマからの要件は"エコロジー""市場ニーズの多様化""低価格化"の3つに対応すること」とし、マイコンとしては「低消費電力」「製品バリエーション」「システムコスト低減」で対応し、それぞれのバランスを取ることが重要とした。

同ファミリは、低消費電力かつ高い性能を実現可能なCPUコア「78K0R」をベースにした新CPUコア「RL78」を採用し、78KとR8C双方の周辺機能を搭載している。内蔵フラッシュメモリの容量を1KB~512KBまで幅広くラインアップ。また、端子数も10ピンから128ピンまで展開する計画であり、幅広い用途に合わせた使い方が可能となっている。

10ピンから128ピンまで1ファミリで幅広くカバー

RL78ファミリのロードマップ。G1xやL1xの1は第1世代を意味しているが、プロセスで世代を区別するつもりはなく、周辺機能の拡充などで第2世代、第3世代と進化していく方針とする

マイコン周辺の各種部品を内蔵することでフットプリントの縮小、簡素化を実現しつつ、用途に応じたマイコンのメモリ容量、パッケージのピン数による低コスト化という縦と横の関係を意識したほか、使いやすさと従来からの移行を意識した開発ツールによる開発費の低減も図ろうとしている

また水垣氏はRL78について「78Kの低消費電力かつ高性能というベーシックな機能と、R8Cの高機能周辺機能を融合することを目指したもので、カスタマに支持されてきた長所を伸ばしたファミリで、両社のDNAが組み合わさった新たなDNAによるもの」とその誕生の意義を説明する。ちなみにRLは"R"enesas "L"ow PowerのRとLを組み合わせたもので、低消費電力を実現する製品という意味が込められているという。

78KとR8Cの良いところを組み合わせたのがRL78。とは言いつつもベースとしているのは78K0Rであり、これについては78K、R8Cともに長年使われてきたアーキテクチャであり、将来に向けてはいささか力不足が否めないという点と、78K0Rですでに低消費電力性などを実現していたろいう点が評価された結果としている

プロセスには130nmを採用。製造は熊本県の川尻工場および愛媛県の西条工場の2工場で行う。これにより、「デリバリのフレキシビリティが向上するほか、災害時などでも供給を確保することが可能となる」(同)という。また、300mmでの130nmプロセス製造も可能であるため、需給が逼迫した場合は300mmウェハ対応工場での生産も可能だという。

川尻工場は旧NECエレクトロニクス系、西条工場は旧ルネサス テクノロジ系の工場ながら、プロセスの統一が進められており、旧プロセスを意識せずにルネサス エレクトロニクスの工場として2工場で生産することが可能となっている

今後の開発ロードマップ。78KおよびR8Cの新規開発は2011年中に終了し、すべてRL78に移行する予定。なお、78K/R8Cともに製品供給はかなり長期にわたって続けていく予定としている

ちなみに130nmプロセスを採用した理由は、低消費電力性の実現と製造のしやすさを意識したため、とのことで、これにより同社従来品(150nmプロセス品)に比べて、消費電力を約50%低減させたほか、チップ面積も内蔵フラッシュメモリ64KBで150nm品比で半減することに成功している。

動作電流は従来品比約半分の70μA/MHz、スタンバイ電流も同約1/10となる0.7μA(HALTモード、RTC+LVD動作時)を実現しつつ、CPU性能は同約1.6倍の41DMIPS(32MHz動作時)を実現している。また、発振器やEEPROMなどの従来は外付けだった部品も内蔵しており、システム全体にかかるコストの低減や小型化を可能としている。

RL78と競合品との電力比較

同ファミリは、汎用用途のGシリーズ、LCD機能を内蔵したLシリーズ、自動車・ボディ向けのFシリーズ、ダッシュボード向けのDシリーズが現在予定されており、順次シリーズの拡大が行われる予定。2011年1月よりサンプル出荷を予定しているのはGシリーズの「RL78/G12グループ」および「RL78/G13グループ」の計302品種で、2011年中の量産開始予定で、2011年上半期で350製品が、2011年通年で合計700製品の発表が予定されており、2012年には合計で月産1000万個の製造を計画。2015年度にはRL78ファミリだけで売上高500億円を目指すとしている。

第1弾製品の特長

302製品がラインアップ

RL78/G13と競合製品との性能と消費電力比較

RL78に搭載される各種機能

RL78/G13の機能ブロック図

また、新コアによる新ファミリということで、開発ツールも一新される予定。ただし、ベースを78K0Rとしていることから、統合開発環境(IDE)「CubeSuite」でも対応し、新IDEは2011年4月より提供開始する予定となっているほか、オンチップデバッキングエミュレータ「E1」およびフラッシュライタ「PG-FP5」は2011年1月から提供が開始される予定となっている。2011年4月より提供される予定の新IDEは、「R8Cをこれまで活用してきた人でも使いやすさをこれまで同様になるように意識したもの」(同)とのことで、旧NECエレクトロニクス、旧ルネサス テクノロジ双方のカスタマを意識したものとなるとしている。

新統合開発環境は従来品(78K/R8C)から開発を行ってきたカスタマを意識した使い勝手を実現しているという

なお、第1弾として発表されたのがG12とG13ということで、何故G11ではないのか、ということを水垣氏に確認したところ、「G12は20ピンからの製品となっている、それ以下の製品なども出る可能性があるということ」との回答をいただいた。