米VMware 仮想化・クラウドプラットフォーム事業部門 シニアバイスプレジデントのラグー・ラグラム氏 |
11月9日、10日の2日間、東京都港区のザ・プリンス パークタワー東京において、VMwareの最新技術を紹介する技術イベント「vForum 2010」が開催された。今年9月に「VMworld 2010」で披露された技術をベースに、それらを活用した各種ソリューションや、仮想化に対する同社の考え方などが詳しく解説された。
以下、米VMware 仮想化・クラウドプラットフォーム事業部門 シニアバイスプレジデントのラグー・ラグラム氏らの講演を基に、同社が提供するソリューションの概要を紹介しよう。
クラウドコンピューティングの定義と特徴
今回のvForumでVMwareから繰り返し発せられたキーワードが「IT as a Service」である。これには、「いつでも簡単に手に入れられ、使った分だけ料金を支払う」という、サービスのように利用可能なIT基盤を構築することで、ビジネスを加速させ、利益拡大につなげていこうといったメッセージが込められている。
そして、このコンセプトを具現化する技術としてVMwareが挙げているのが、仮想化を活かしたクラウドコンピューティング技術である。
講演ではまず、あいまいに使われることが多い「クラウドコンピューティング」という言葉を「効率的なリソースプールを活用して、必要に応じて自己調整可能な仮想インフラストラクチャをサービスとして提供する、コンピューティング手法の1つ」と定義。そのうえで、この技術の特徴として、「使用率向上と自動化がもたらす効率性」、「俊敏性を持った管理」、「柔軟な選択肢」の3点を挙げ、それぞれの詳細を次のようなスライドで説明した。
このクラウドコンピューティング技術をベースにして、VMwareが力を入れているソリューション分野が、「エンドユーザーコンピューティングの再検討」、「アプリケーション開発を近代化」、「インフラストラクチャを革新」である。ラグラム氏はこれら3分野の最新技術をデモを交えながら説明していった。
iPad向けクライアント、SaaSとのシームレスな連携
「エンドユーザーコンピューティングの再検討」という点では仮想デスクトップ技術の「VMware View」が紹介された。
ラグラム氏は、企業システムが社内のデスクトップPCのみならず、私用のノートPCや、iPhoneなどのモバイル端末からも利用されるようになってきていることを挙げたうえで、「デバイス中心では管理が間に合わなくなってきている」と説明。ユーザー中心の管理環境を作らなければ、管理が煩雑になるうえ、十分なセキュリティを確保することもできないことを説明。続けて、「ユーザーの利便性を考えても、各端末で異なる環境を利用しているようでは生産性は低下する」と述べ、多くの端末で同じデスクトップを利用できるVMware Viewの優位性を強調した。
さらに、ラグラム氏は同社が開発中の技術である「Projcet Horizon」も紹介。Projcet Horizonでは、ユーザー認証を一元化するためのもので、デスクトップ上に用意された各種SaaSアプリケーションのアイコンをクリックするだけで、各SaaSアプリケーションを利用できるようになる。裏ではVMware ViewのユーザープロファイルとSaaSアプリケーションとのIDが関連付けられており、ユーザーはSaaSアプリケーションを利用する際にIDやパスワードをいちいち入力する必要がない。管理者にとっても、アクセス権限の設定作業などを一元的に行えるといったメリットがあり、デスクトップとSaaSアプリケーションをシームレスにつなぐ技術として注目されていることを説明した。
Project Horizenのデモ。画面は、開発中のiPad向けVMware Viewクライアントのもの。画面左下のsaleseforce.comのアイコンは、直前に管理者用の画面から追加したもので、同アイコンをクリックするとWebブラウザが立ち上がり、saleseforce.comがログインした状態で現れる |
開発プラットフォームの拡充
一方、「アプリケーション開発を近代化」に関しては、Spring Frameworkを中心としたさまざまな開発向けソフトウェア群で構成される「VMware vFablic」が取り上げられた。
5月に買収した米Gemstone Systemの分散データキャッシュソフトウェア「Gemfire Enterprise」などがポートフォリオに加えられ、対応できるアプリケーションの幅が広がったことを説明。さらに、米salesforce.comやGoogleが提供するPaaSがSpringプロダクトを搭載し、パブリック、プライベートを問わず、クラウド向けのアプリケーションを開発できる環境が構築できたことを示した。
VMware vSphereの能力
そして、「インフラストラクチャを革新」については、VMwareの中心製品「VMware vSphere」を強化したことを紹介。今年7月に4.1へとバージョンアップさせ、1クラスタあたり32台のホスト、3000台の仮想マシンを実行可能になったほか、1台のvCenter Serverで1000台のホスト、10000台の仮想化マシンを管理できるようになったことなどを説明した。
さらに、仮想マシンごとにネットワークI/Oを制御できるになり、仮想マシン単位でSLAの確保確保が可能になったほか、「VMware vCloud Director」により、SLAの異なるサービスメニューを用意し、各部署に対して利用した分だけ課金するといったインフラが簡単に構築できるようになったことを解説。加えて、仮想マシン単位だけでなく、複数の仮想マシンで構成される「アプリケーション単位」、複数のアプリケーションを稼働させる「テナント単位」でセキュリティをかけられる「VMware vShield」をポートフォリオに加えたことも紹介し、信頼性に関しても大きく向上させていることをアピールした。