オープンソースのモバイルプラットフォーム「Symbian」を推進する非営利団体Symbian Foundationは11月9日、オランダ・アムステルダムで年次カンファレンス「Symbian Exchange & Exposition(SEE) 2010」を開催した。前日にSymbianがフィンランドNokiaの管理下に入るという重大な発表が行われている。緊張した雰囲気に包まれて迎えた初日、Symbian Foundationのエグセクティブ・ディレクター Tim Holbrow氏が今回の決断についてコミュニティを前に説明した。

Symbian Foundationエグセクティヴ・ディレクターのTim Holbrow氏。創業以来エグセクティヴ・ディレクターを務めたLee Williams氏が先月辞任したのに伴い、任務についたばかりだ

Holbrow氏は今回の変更の理由について、率直に次のように語った。「業界に自然な進化が起きており、急速に大きな変化が起こった。さらにここ数年の経済状況もこの変動を加速した。そこで、これらの変化に対応していく必要があると判断した」

背景にはもちろん、主として「Android」の勢力が増し、Symbian Foundationの支持が減っていることがある。英Sony Ericssonや韓国SamsungなどFoundationメンバーがSymbianを採用しなくなり、現在Symbianを採用した携帯電話を製造しているのは、主要ベンダではNokia、それに富士通などだ。

Sony Ericssonらベンダのブースが減り、規模は縮小した今年のSEE

「難しい決断だった」とHolbrow氏。リーダーシップチームとボードメンバーとで、Symbianが成功するためには最善で正しい方向性だと合意した」と続けた。

Symbian FoundationとNokiaが発表した新しい戦略をベースに、Symbian OSの開発はNokiaの下で行われることになる。これを受け、Symbian FoundationはSymbianライセンス供与を専門とする組織になるとHolbrow氏は説明する。Symbianプラットフォームの商標の管理などの法務のみに責任を持つことになり、今後6カ月かけてそれに向けた作業を進めていくという。具体的には、人事、組織構造を含め運用全体が変わることになり、多くのスタッフが解雇になるようだ。「残念ながら、Symbian Foundationの運用の多くは3月末に停止する」とHolbrow氏は述べた。

これは運用側の変更であって、Symbianそのものはこれまで通りとなる。「Symbianのライセンスが変更したり、有料になるなどのことはない」と確認した。Nokiaは今後、オープンな代替モデルを探ることになる。Foundationの変更と同時に、Nokiaのサポートも行っていくとHolbrow氏は述べた。

Holbrow氏は後半、プラットフォームとしてのSymbianの成功を強調した。「Symbian FoundationとSymbian Platformは違う。Foundation側の変更とPlatformの成否は関係ない」とHolbrow氏、Symbianのシェアは最大で、Symbianが2010年第3四半期までの累計出荷台数は4億台に達していると述べた。Gartnerが2014年単年のSymbianの出荷台数を2億6500万台と見積もっていることにも触れた。

「リーチできる市場は大きい。今後、さらに多様なデバイスで利用され、ユーザーもさらに多様化するだろう」とHolbrow氏。そして、NTTドコモや富士通などが主導する活発な日本のSymbianコミュニティ、コミュニティプロジェクトとして進んでいるローコストハードウェアリファレンスプラットフォーム「Wild Duck」などを挙げた。そして、「2010年2月にオープンソースしたが、過去最大のオープンソースプロジェクトだったにも関わらず、予定を4カ月前倒しで実現した」とチームを賞賛した。

最後に「今後もプラットフォームとしてのSymbianは進化を続ける」と締めくくった。