楽天は11月9日、2010年度第3四半期(7月1日 - 9月30日)における連結業績を発表した。売上高は前年同期比14.5%増の884億4,700万円、営業利益は5.0%増の159億5,400万円、経常利益は4.0%増の155億7,600万円となり、増収増益を果たしている。同社代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は「EC事業が国内/国外ともに堅調に推移したこと、加えてトラベル事業の成長が大きい」と語る。
第3四半期連結累計期間(1月1日 - 9月30日)における業績は、売上高が前年比16.4%増の2,525億5,600万円、営業利益が同14.5%増の442億200万円、経常利益は同15.4%増の431億1,500万円、四半期純利益は同44.2%減の264億5,900万円となっている。四半期純利益が大幅減となっているのは、前年度に繰延税金資産の計上による法人税等調整額が210億円ほど発生し、470億円を超える純利益が出たため。
三木谷氏が挙げた第3四半期のハイライトは
- 売上高、営業利益、経常利益、EBITDA(240億円)は、第3四半期としては過去最高を記録
- 楽天市場、楽天トラベルなど国内事業は健全な成長を持続
- EC事業の国際展開において、中国事業(楽酷天)の出足は順調、米Buy.comと仏PriceMinisterの買収を完了し、利益率が改善
- クレジットカード事業が利益回復基調に
となっている。
楽天グループの要でもある楽天市場について、三木谷氏は「酷暑の影響で、ユーザの購買意欲が減退したことや、衣料や暖房器具など冬物商材の売れ行きに遅れが生じたこと、昨年のインフルエンザ特需の効果がなくなったことなど、いくつかのマイナス要因はあったが、流通総額は高い水準で推移している。第2四半期に比べ、1人あたりの購入総額や購入金額は若干落ち込んでいるが、悲観するほどの材料ではなく、堅調に推移してきたと見ている」と説明する。また、第3四半期ではマーケティングキャンペーンの実施に伴うポイントコスト増加と、国内外の事業拡大による開発費や管理費などの負担増が大きかったことから、利益改善に向けて"効果的なマーケティング"の見直しとコスト管理の徹底を行うとしている。また、流通総額の中期的増加施策として、「アパレル商品など品揃えの拡充」「Rakutenクーポンやフラッシュマーケティング、プライベートセールスによる販売手法の多様化」「RFC(Rakuten Fulfillment Center)開所に代表されるロジスティクスの強化」を掲げる。
海外EC事業についてはBuy.comおよびPriceMinisterの買収完了と、中国でのショッピングモール開始という、2つの大きな出来事が第3四半期中にあった。Buy.com、PriceMinisterの両社は"KPIマネジメント"が奏効し、利益率が大幅に改善したとされる。「これまで型番商品の販売が中心だった両社だが、楽天主義を導入することで、ソーシャルショッピングなど"アクティビティをシェアする"という動きが生まれるようになり、高成長を実現することができた。また、各国の技術者が参加する"Rakuten Federation Technical Meeting"を開催、多国間でのサービス/技術の共同開発を推進している」(三木谷氏)と買収によるシナジー効果を強調する。また、百度とともに提供する中国のショッピングモール「楽酷天」は現在約2,000店舗が出店、多様な決済手段の提供と模倣品の発見/排除の徹底など、現地の実情に合わせたサービスを展開しており、順調に推移しているという。
今回、楽天の好業績を牽引した立役者とも言えるのがトラベル事業だろう。売上高は前年同期比18.0%増、営業利益は20.0%増と高い成長を記録、国内旅行取扱高は526億円で、これはJTB、近畿日本ツーリスト、日本旅行に次いで国内第4位となる。この急成長の要因として三木谷氏は
- 夏の需要取り込みの奏効→予約流通総額が前年同期比で15.6%増
- JAL楽パックの販売を9月から開始、約900便の航空券と約2万件の宿泊施設を自由に組み合わせられる"ダイナミックパッケージ"を推進
- 「たびメモ」などAndroid/iPhone用アプリケーションをリリースし、スマートフォン対応を強化、大型企画の開催→利便性の向上と新規ユーザの取り込み
を挙げる。また、「楽天トラベルのようなオンラインサイトで旅行を予約したり、スマートフォンから旅行情報へアクセスしたり、また、その情報をユーザ間で共有することが、ユーザにとってはもはや当たり前のライフスタイル」(三木谷氏)と語り、ユーザのビヘイビアの変化に応じた商品やサービスの開発が重要であることを強調する。「トラベル事業にも楽天市場流のやり方が浸透し、受け容れられてきている」(三木谷氏)
もうひとつの注目すべき事業がクレジットカード事業だ。三木谷氏は「ビジネスモデルの転換が順調に進んでいる」と語り、楽天市場でのショッピング取扱高の成長が加速していることや、Edy機能つき「楽天カード」の発行、国内クレジットカード業界初のiPhone対応の支出管理アプリケーションのリリースなど、楽天の各事業とのシナジー効果があらわれ始めていることを強調している。もっともクレジットカード事業については、売上高は前年同期を上回っているものの、新規顧客獲得の販促費用により営業利益は同45.5%減となっている。三木谷氏は今後のカード事業の収益改善のために「既存顧客と新規顧客、きちんと分けたビジネスを展開することを軸とする」としている。
10月からスタートした第4四半期はクリスマス商戦や年末商戦を控え、EC事業の売上が大幅に伸びることが予想される。これに加え、管理体制をさらに強化して、不採算事業の見直しや戦略的マーケティングの実施を行い、利益率の向上を目指す。さらにAndroid/iPhoneアプリケーション開発、ソーシャル化によるユーザ間の情報共有などをさらに進め、事業間のシナジー効果を高めていきたい構えだ。通期では対前年度比で売上/利益を上回ることはもちろん、どこまでその数字を上積みできるか - 過去最高の業績を記録することができるかどうかが注目される。