2009年4月にAV機器の映像/音声インタフェース規格として「DiiVA 1.0」の仕様が規格の策定団体である「DiiVA Consortium」により発表された。DiiVAはDigital Interface for Video and Audioの略で、DiiVAのWebサイトでは、そのミッションを「次世代のコンシューマエレクトロニクスとホームネットワーキングのスタンダードを構築する」としている。

同コンソーシアムを主導するプロモータは中国Changhong、中国Haier Electrical Appliances、中国Hisense Electric、中国Konka、中国Nanjing Panda Electronics、中国Skyworth、中国SVA(上海広電電子)、中国TCL、台湾Synerchip、Samsung Electronics、ソニーとほぼ中国の主要AV機器メーカーであり、中国の政府機関「中国工業和信息化部(MIIT)」や、業界団体「CVIA」の支持も受けており、「中国版HDMI」との見方をする向きもあるし、実際のターゲット市場としては中国をメインに据えている。

DiiVA Consortiumの主なメンバー。赤枠の中のメーカーがプロモータとなっている

しかし、この中国版HDMIという見方をDiiVA LicensingのPresidentであるBrett Gaines氏は真っ向から否定する。「10年前、HDMIが提唱されたが、それはTVとSTBやDVDプレーヤを単につなぐというものだった。しかし2010年の現在、コンテンツはTV以外のさまざまな機器で見ることができるようになり、またその配信方法もWebを中心に新たな形が登場してきた」(Gaines氏)であり、そうした現状において、デジタルTVのリモコンを想像してもらうと分かりやすいかもしれないが、多数のボタンを押して、機器とつながっているチャンネルに切り替えて、といったことを行っていると「ユーザーは利便性をまったく感じない」(同)ということとなる。また、メールやTwitter、各種SNSなどのサービスも登場してきており、そうした新たな使い方にも対応する必用も生じてくる。

DiiVA LicensingのPresidentであるBrett Gaines氏(左)と、実際にDiiVA規格を用いた機器のデモを見せてくれたSynerchipの日本法人シナーチップジャパン代表取締役の青木健二氏(右)

「DiiVAが考えているのは、コンテンツが多様化した今、コンシューマに新たなビジョンを提供しようということだ」とHDMIと異なった文化を築くことを目指しているのだと同氏は語る。この言葉だけだと漠然として分かりづらいが、例えばTVとスマートフォンを連動させて、リアルタイムにリビングのTVで見ていたものをスマートフォンに移し、それを見ながらベッドルームに移動、ベッドルームにあるTVでシームレスに視聴といったことを実現しようとしていると言うと、理解していただけるのではないかと思う。

わざわざ機器のつなぎ変えなくても、シームレスにテレビからテレビへ、またスマートフォンへとコンテンツをリアルタイムに転送することが可能というコンセプトがDiiVAの目指すところ

この利便性をどうやって実現するか。DiiVAの答えは「仮想化技術を活用する」(同)というもの。従来、TVと何かしらの機器(例えばHDDレコーダやコンソールゲーム機)はそれがHDMIであっても、1対1でつながっているため、HDDレコーダの内容を見るためには入力1に切り替え、ゲームをするときには入力2に、といった作業が必要で、なおかつ、どの機器に何のデータが入っているのか、何がつながっているのかを覚えておく必要があった。DiiVAでは、プラットフォーム上に存在するTVやHDDレコーダ、PC、ゲームコンソール、Blu-Rayプレーヤなどは、つながってさえすれば、接続デバイスとして認識され、切り替え作業などを行わなくてもコンテンツをTVやスマートフォンなど好みのデバイスに表示することが可能となり、同氏は「見たいときに見たいものを見たい場所で見ることができる。TVのパーソナル化が可能となる」とその意義を説明する。

左が従来のテレビと各種機器が1対1で接続する姿。これだと、機器とつながっているテレビでしかそのコンテンツを楽しむことは出来ない。これをDiiVAという仮想ネットワークを介することで、どの機器がどのテレビとつながっていようとも、その先につながっている別のテレビでも見ることもできるし、USBをサポートしているので、コンソールゲームのUSBコントローラをそこに挿すことで、本体と離れたテレビでも遅延なくゲームをすることが可能となる

ただし、DiiVAはあくまで有線を基本とした技術であるため、Wi-Fiなどを経由してスマートフォンに送られた画像データは圧縮されたものとなってしまい、本来のDiiVA規格とは若干異なるものとなる。ワイヤレスHDMIの規格もあるので、同様にワイヤレスDiiVAは考えていないのか、と聞いたところ、「非圧縮データをワイヤレスで飛ばすためにドングルを活用したり、アダプタ経由でワイヤレスプロトコルを用いる方法はあるかもしれない」(同)と含みを持たせつつも、「帯域幅の制限があるから、現状の技術レベルではワイヤレス環境でフルにDiiVAを体験するのは難しい。将来的に技術革新が進んでからの話になるだろう」(同)と、あくまで高速無線通信技術が登場してからのこととなるとした。

ちなみに、DiiVAのケーブルは3対の映像伝達用の信号線と1対のデータ信号線が用意されており、映像伝達側は1本の線あたり4.5Gbpsで送り、3本で13.5Gbpsの転送レートに対応する。一方のデータ側は4.32Gbps(片方向2.16Gbps)のデータ転送が可能となっている。

DiiVAのアーキテクチャ

また、2010年10月5日(米国時間)に「DiiVA 1.1」と「Compliance Test Specification(CTS)1.1」および中国・広州にATC(Authorized Testing Center:認証テスト・センター)の開設を発表。DiiVA 1.1とCTS 1.1については、12月3日までレビューとコメントを受け付けている。

このDiiVA 1.1ではケーブル上での電源供給を可能とするPower over DiiVA(PoD)とUSB接続の詳細が定義されたほか、3Dコンテンツ表示にも対応が図られた。また、International Electrotechnical Commission(IEC:国際電気標準会議)のフォーマットとの整合性も取られたという。