Wolfson Microelectronicsは、携帯機器におけるHDオーディオの実現に向けた各種ソリューションを発表した。今回発表されたのは、オーディオ・ハブソリューション「WM8958」とフルCMOSプロセスにより製造されたMEMSマイク「WM7210」および「WM7220」の2品種。

オーディオ・ハブソリューション「WM8958」

MEMSマイク「WM7210」

MEMSマイク「WM7220」

同社オーディオハブ製品ラインマネージャのDuncanMacadie氏は、最近のHDオーディオの牽引役をスマートフォンや携帯電話といった機器とする。こうした携帯機器にさまざまな機能が搭載されるようになり、必然的にオーディオにも性能向上が求められることとなるというのが同社の言い分で、オーディオ処理のためのチップをアプリケーションプロセッサと別にすることで、例えばAndroidを用いたスマートフォン、スマートブック、組込機器など同一のOSで幅広いプラットフォームに同じような音の体験を提供することができるようになると同氏は説明する。

また、映像などの高品質化により音声の高品質化も求められるようになり、1チップだけで映像、音声両方の処理を行おうとすると、相当高い性能が必要となるという。「だからこそ、我々はコプロセッサとして音声処理を別チップにして提供することで、機器メーカーは差別化を図ることができるようになる」(同)。

HDオーディオを牽引するのはスマートフォン/携帯電話だが、複雑化するニーズに対応するさまざまな機能が求められるようになってもいる

例えば、同社のチップを用いると、それぞれ独立した複数の端子に出力することが可能だ。これにより、1つの音源をヘッドホンで複数の人が同時に聴くことが可能となったり、ノイズキャンセリングなども行うことが可能となる。また、HDビデオに対応する高音質化や携帯電話の通話品質の向上も可能となる。さらに、それを低コストかつ低消費電力で実現することが可能だと、同氏は強調する。

さまざまな機器に対するWolfsonのHDオーディオソリューション。それぞれの画像では別々のチップで接続されているが、それぞれの機能を内蔵したオーディオハブチップ1チップのみで、同様の機能を実現することも可能。これは、機器側がどういった使い方をしたいかによって変わってくるとのこと

「今のスマートフォンは音声処理の面から見ると、複雑な配線になっている。我々の目的はこれを簡素化しながら、機能強化を図ることだ。例えば、スマートフォンではイヤホンとスピーカには別々のチャネルが欲しいといわれている。これに対応するために、我々は録音側と再生側それぞれに複数チャネル対応を果たしている」とし、これにより、音楽再生時のクリアで明瞭な音質を実現し、かつ通話時の品質の向上を実現しつつ、設計を簡素化することが可能となるソリューションを今回提供できたと述べる。

音声処理を行う機能は増え続けているが、その結果として配線などが複雑化することとなる

WM8958の最大の特長は、マルチ・バンド・コンプレッサー(MBC)を駆動する24ビットのオーディオDSPの処理性能を向上させたこと。これにより、Hi-Fiレベルの音質を「どんな機器であっても実現できるようになる」とし、すでにMobile NetworkがHD Voiceとして採用することを決定しているとするほか、「サラウンド効果なども実現できるようになる」とした。

オーディオ・ハブソリューション「WM8958」の概要

また、最大4チャネルのD/Aコンバータおよび同4チャネルのマイクならびにA/Dコンバータ入力を搭載しており、これらの入出力を活用することで、それぞれ異なる出力に同時に音声を流すことができたり、ビームフォーミングノイズキャンセリングなどができるようになる。

一方のMEMSマイク2製品は、同社初となるフルデジタルMEMSマイクで、59db(Top port)のS/N比、-26dBFS@94dBSPLの検出感度、動作モード時の消費電流646μA、スリープモード時消費電流2.5μAを実現している。また、起動時間とスリープへの移行時間の高速化も実現、起動時間で10ms、スリープへの移行で2.5msを実現しているという。

フルCMOSによるMEMSマイクの概要

いずれもサンプル出荷を開始しており、今後も「MEMSマイクは小型化、高性能化を進めていく」とするほか、「オーディオハブについても、新たな機能の統合などを進めていく」と将来に向けたロードマップを示す。なお、この新たな機能の統合は、アンプやノイズキャンセラといった音声機能のみならず、将来的にはタッチスクリーン機能などの周辺機能も含まれる可能性があるとしている。

オーディオハブのロードマップ。現状はDSPの処理性能が注目されているということで、左から3番目の位置づけとなっている。今後、さらに機能強化を目指したさまざまな機能統合が行われることとなる