米SAS Instituteが主催する企業の経営層向けのカンファレンス「The Premier Business Leadership Series」が10月26日~28日の3日間にわたり米国ラスベガスで開催される。ここでは、27日に行われた基調講演と同社のCEOであるJim Goodnight氏と、Accenture Chairman & CEOのBill Green氏によるパネルディスカッションの模様をお届けしよう。
同カンファレンスは今年で3回目を迎え、年に3回世界各地で開催される。今年はラスベガスのほか、ベルリンと香港で実施された。同カンファレンスでは、「イノベーションを促進する企業カルチャーを掘り起す方法」や「意思決定を行うアプローチを変容させるためのリソースを最適化するための方法」を共有したい企業のリーダーに対し、有益なセッションを提供している。
Dartmouth College International Business Professor and Director of Tuck Ctr. for Global Leadership Vijay Govindarajan氏 |
今回の基調講演は、Dartmouth CollegeのInternational Business Professor and Director of Tuck Ctr. for Global Leadership、Vijay Govindarajan氏が、「Turning Innovation into Realization」というテーマの下で行った。
同氏は企業戦略のエキスパートであり、米国の経済誌『Forbes』の「Top Five Most Respected Executive Coaches on Strategy」や『BusinessWeek』の「Top Ten Professor in Corporate Executive Education」に選ばれている。
同氏は、ビジネスにおける典型的な行動パターンとして、以下の3点を紹介した。
- Box1:Manage the present (現状をマネジメントすること)
- Box2:Selectively forget the past(過去のやり方を選択してやめること)
- Box3:Create the future((新たなやり方を創造すること)
これらのうち、「企業はBox2、3にシフトする必要があるが、多くの企業はBox1にとどまっている」と同氏。ただし、近年成長が目覚ましい中国やインドの企業の中でも特に伸びが大きな企業はBox1の行動パターンから脱しているという。
その例として、インドの自動車メーカーであるタタが挙げられた。周知のとおり、インドは人口が多いため市場は魅力的であり、これまでにBMW、ロールスロイス、フォードといった大手自動車メーカーがインドの市場に参入したが、シェアを獲得できなかった。
そうしたなか、地元のメーカーであるタタは2,000ドルの自動車を販売して成功を収めた。同氏は「インドに合わせたビジネスモデルを作ることが大切であり、フォードのデザインチームがデトロイトでインドで売れる自動車を作ることは難しい」と指摘した。
また同氏は、Box1とBox2/3における戦略的なバランスについて説明した。「Box1ではパフォーマンスのギャップから組織の再構築を行い、また、Box2と3では機会のギャップから組織のリニューアルを行う」
さらに米国における成功事例として、米国の新聞『New York Times』の電子化が紹介された。New York Timesはインターネットが広がり始めた1995年に電子版の展開を行った。その際、従来の紙の新聞を製作するチームとは別に、外部から人材を雇用して電子版のチームを組成して新たなチームで商品開発を行うことで、成功を収めた。
同氏は、このように新たなビジネスモデルを作り出し定着させるためのカギとして、「新たなビジネスを遂行する人材を雇うこと」と「コアビジネスから切り離して、新たなビジネスを行うこと」を挙げた。
続いて、「Creating an Analytic Organization」というテーマの下、SAS Institute CEOのJim Goodnight氏、Accenture Chairman & CEOのBill Green氏がパネルディスカッションを行った。ホストは、SASのSenior Vice President and Chief Marketing Officer、Jim Davis氏が務めた。
両氏は、昨今の厳しくかつ変化が激しい経済環境の中で企業が市場を勝ち抜くには、「事実に基づいて分析を行い、それに基づいて行動できる企業文化」が必要だと話した。
Green氏は、そうした文化を企業に定着させるためには、事実に基づいて行動できる優秀な人材とそれを実現する仕組みが必要と指摘した。「ITについてもトレンドを追いかけるのではなく、ビジネス価値をどのように出していくかを考えなければならない」
両者の発言を受け、Davis氏は「分析力を活用できる組織へ変革していくためのアプローチとはどのようなものか?」と質問を投げかけた。
Goodnight氏は、「マーケティング部門ではさまざまなデータを分析して事実を見出して施策を立てることに抵抗はないはずだ。このような部門から変革を進めていくというアプローチがある」と説明した。
またGreen氏は、同社がグローバルのオフィスに20万人の従業員を抱える企業であることを踏まえ、Accentureでは「グローバルの状況に加えて各国はどのような状況にあるか」「レバレッジが効いているか」といった観点からビジネスが見えるようにしていると述べた。
さらに、両者は分析力を活用できる組織を育成する具体的な方法について言及。Goodnight氏は、今日は創造性の高い人材がインドなどアジアから多く輩出されているとして、「米国でも正しい意思決定が行えるスキルを養う教育を行うことが大切」だと主張した。
Green氏は、企業に入る前である大学においても「意思決定のためのスキルを伸ばすための横断的な教育プログラム」が必要だとした。