サイレックス・テクノロジー代表取締役社長の河野剛士氏 |
サイレックス・テクノロジーは10月27日、都内で会見を開き、同社が提供するUSBデバイスサーバと、USB仮想化技術「SX Virtual Link」を活用したクラウド向けビジネスを強化していくことを明らかにした。
同社代表取締役社長の河野剛士氏は、これまでの同社の事業を、「およそ5年前にUSBネットワーク機器の1号を出荷した。当時、接続の中心はプリンタだったが、その後、USBネットワーク接続を広めたいと思い、さまざまな取り組みを行ってきた」と振り返り、従来のOEMやシンクライアント向けだけではなく、「1年半ほど前、米国からUSBデバイスサーバ技術のライセンス販売を開始。すでに米国4大ルータメーカーの内2社が採用を決定しており、日本でのビジネスも開始しており、2010年に入り、ライセンスビジネスは急拡大をしている」と、ライセンス収入が新たな同社の事業の柱になりつつあることを強調する。
OEM向けでも、ライセンスビジネスにしても、同社の事業の核となるのは独自のUSB仮想化技術「USB Virtual Link Technology」だ。USBデバイスサーバは、2005年の販売開始より、450機種以上のUSB機器に対するチューニング実績を誇る。
2005年の販売開始より、450機種以上のUSB機器の評価を実際に行い、その都度発生する問題を機器それぞれの問題としてではなく、その機器が含まれる分野全体の問題としてバッファリングによるタイミング調整など、根本的な問題解決手法を取り入れ解決してきたのが同社の現在の強みとなっている |
サイレックス・テクノロジー執行役 PNS事業部長の伊藤信久氏 |
「サイレックスの持つこのコア技術を適用アプリケーションごとにセグメント分けすると、事業領域としては『OEM』『ルータ』『シンクライアント』『クラウドコンピューティング』の4つ」(同社執行役 Products Networking Solution事業部長の伊藤信久氏)となる。中でも、2010年に入り拡大を続けるルータ向けライセンスビジネスについては、「ミドルウェアを中心としたソフトウェアの提供などを含む技術サポートも提供することで、ビジネスの拡大を目指す」(同) とする。
河野社長も、「まずはルータの市場を獲得する」ということが眼前の目標となっていると指摘。すでに国内の大手ルータメーカー5社中3社に採用されており、シェア2位のメーカーとも協議中とのことで、「少なくとも1社のぞいて2011年上半期には、ルータにUSB接続できる技術などを搭載したモデルが登場するだろう」(伊藤氏)との予測を示す。
そしてその次のビジネスとして「用途開発なども含めて時間をかけて前進していく」(河野氏)と語るのが、次の事業の柱としたいクラウド向けビジネス。すでに10月6日にNTTグループの光LINK端末「N-TRANSFER」に同社のクラウド対応デバイスサーバが採用された(注:リンク先はPDF)ことが明らかにされているが、こうした動きもその1つの成果の形となっている。
N-TRANSFERのコンセプトは、拡大するパーソナルクラウドをPCスキルの高くない人にも活用してもらうために、スキルのある人とない人の間に存在するギャップを埋めるためのデバイスを提供する、というもの。また、家庭内のデジタル化やネットワーク化への対応の容易化というものも含まれているという。
同製品の構成はUSBポートが2つ、Ethernetのポートが1つという単純な構成。ルータと接続し、USBポートに機器を挿すだけでネットワーク上にデータを送信することなどが可能となる。なお、それぞれの機器にはQRコードが付属しており、それぞれ専用のパーソナルスペースにデータをアップロードすることが可能となる。
現状3つの機能を有しており、1つ目がUSBデバイスサーバとしての機能。2つ目が「P2Pデータ送受信機能」、そして3つ目が「クラウドサービス接続機能」となっている。
例えばP2Pデータ送受信機能を用いると、USBメモリなどを挿すことで、最大500MBまでのデータを特定の相手とのみ送受信できるようになるほか、クラウドサービス接続機能を活用すると、スキャナで取り込んだデータをPCを介さずにそのままEvernoteに転送することが可能となる。
なお、「全世界にはUSB接続可能な機器が8000種類あるといわれている。今後、接続できる機器を増やしていくほか、クラウドサービスを提供する企業などと連携を進めていくことでポータルサービス向けのビジネスパッケージなども提供していきたい」と同社では将来のクラウド向けビジネスの方向性を示しており、今後はiOSやAndroidといったモバイル機器向けOSへの対応やNAT(Network Address Translation)越えによる宅外での活用などに向けた機能開発を進めていくとしている。