既報の通りサイボウズは、クラウド型のグループウェア「サイボウズLive」の自由登録制移行を発表した。記者発表会では、主に「グループ」機能に関して具体的な活用事例が2つ紹介されたので、"ビジネスSNS"としての活用のヒントとして、本稿ではこちらに焦点を当ててみたい。
サイボウズLiveは「オフィス(事務所)そのもの」 - Kizna 中村氏
1つ目として紹介されたのは、2009年9月に創業したばかりのベンチャー企業 株式会社Kiznaでの活用事例。
同社はTwitterクライアントを開発する企業だが、オフィス(事務所)を持たず、参画メンバーは皆、本職をほかに持つ兼業という形で事業に参加している。 現在は仙台や福岡、東京など、異なる拠点で15名以上がKiznaに参加し、組織としては7つのグループに分かれているとのことだ。同社はこのような「バラバラな状況」をとりまとめてプロジェクトを進めるためにサイボウズLiveを利用している。
Kiznaの設立者(株式会社グレイス 代表取締役)の中村仁氏は、「現在はTwitterでCRMのようなものを実現する」ことを目的としてアプリの開発を行っており、近日中に公開予定とのことだが、20人まで無料で使えるメリットを生かし、目的にあわせて5つのグループを作成・管理しながらサイボウズLiveを運用している。
サイボウズLiveでは主に開発中のビルドファイルの共有や機能要望に関する情報の共有などが行われており、「課題の発見・共有が迅速に行える」(中村氏)点に同ツールのメリットを感じているという。
メーリングリストでの情報共有も行われているとのことだが、「引用、引用……の連続で話題の整理が難しく、中身を見ていないメールが増え、事実上破綻している(笑)」(同氏)状況だそうだ。
このような状況を踏まえ、メーリングリストについて同氏は、「話が散逸で拡散しがち」「途中参加しづらい」「話題を整理できない」「コントロールできない」といった問題点を指摘。「情報を共有できているようで、実は共有できていない」と断言する。
「メールは"連絡"には向いているが、"議論"には不向き」と語る同氏は、「情報を1ヵ所に集めて『整理』『分類』『履歴』を行えるグループウェアのメリットを強調している。
Kiznaでは、「サイボウズLive上で常に"会議"が行われているような状況」とのことだが、"Twitter企業"とも呼ばれ、オフィスを持たない彼らにとって「サイボウズLiveはオフィスそのもの」だという。
在宅医療現場でも有用 - 睦町クリニック 朝比奈氏
2つ目に紹介されたのは、医療現場(在宅医療)での活用事例。
4年前に制度化された訪問診療では、「常に緊急」とされる従来の往診とは異なり、計画的かつ月2回以上の診療が必要とされる。そこでは、ケアマネやヘルパー、訪問看護、病院主治医、訪問入浴などを担当する人たちが、ひとりの患者に関する情報を効率的に共有する手段が求められる。
横浜市にある睦町クリニック 医院長 朝比奈完氏は、「これまでは電話やファックス、連絡ノート、電子メールなど、複数のツールを使った情報共有に関するやりとりを行っていたが、とくに電話やファックスについては、煩わしさや情報整理の手間がかかるといった課題を抱えていた」という。
医療でのICT活用は各所で叫ばれているが、「従来の医療でのICT利用は、莫大な費用がかかる国の補助金事業」(同氏)であり、簡単に導入できるようなものではなかった。
そこで同氏は、「20名まで無料で使えること」「(患者単位で作成・運用している)グループの間でのセキュリティ確保が容易であること(グループの存在自体を外部から隠せること)」「いくつでもグループを作成できること」といったメリットを生かし、このような情報共有の課題を解決するためにサイボウズLiveを導入した。
グループの作成方法など、失敗も経験しながら試行錯誤の末にたどりついた現在は、「導入前と比べると情報量が圧倒的に増えた」というメリットが生まれていると同氏は語る。
また、記者発表会では同氏が携わった末期がん患者診療の際に、「とりわけ在宅医療の現場では、情報を共有することで人を支えることができる(患者の親族の心の支えになることができる)」ということに気付いたことが、サイボウズLiveの導入につながったというエピソードが披露された。
サイボウズLiveは今回の記者発表会で紹介された事例のほかに、NPO法人や、サイボウズ 青野社長自身が理事長として利用したというマンションの理事会など、すでに多数の導入実績があるという。