我々ビジネスパーソンは、PowerPointでのプレゼンの機会は避けられない。というわけで今回は良いスライドの作り方について紹介したい。
今まで数多くのPowerPointプレゼンを見てきたが、一番がっかりするのが「情報の詰め込みすぎで読む気が起きない」パターンである。こういう場合はスライド作成者の性格が心配性なのか、あるいは聞き手にいろいろな情報を伝えたいという一心なのか、えてして、あれもこれもといろいろな関連情報を小さな文字と細かな絵で詰め込んでしまう。その結果、重要なポイントがぼやけてしまって相手に伝わるものも伝わらない。そもそも文字が小さ過ぎて遠くの人は見えないこともある。
プレゼンとはあなたの知識をひけらかすのが目的ではない。あなたが伝えたいことを相手に伝えること、そして相手をあなたの思うとおりに行動に移させることが目的である。
したがって論理的に正しいことをスライドに書いてはいけない。聴衆が理解できるように書かなければならない。独りよがりであってはいけないのだ。聴衆に対する思いやり、そう、たとえば日本旅館の女将のような「おもてなしの心」が必要なのだ。あのお客様はそば殻枕がお好みだから用意しておこう、みたいな。
PowerPointのプレゼンでは聴衆によって内容を変える必要があるのは当然である。今回は一般的に人間はどのように認知するのかという心理学的な知見を用いて、どのようにスライドを作ると理解しやすいスライドになるのかという点を考える。
心理学と言われても「オレ、ワカンネ」であろう。そこで今回紹介するのが、USAToday.comなどへ寄稿しているジャーナリストのアニータ・ブルゼッセさんのブログから「よりよいPowerPointプレゼンのための7つのヒント(原題: 7 Tips for a Better PowerPoint Presentation)」である。
このブログのなかで、ハーバード大学の社会科学部長で心理学者のステファン・コスリン教授の著書「Better PowerPoint: Quick Fixed Based on How Your Audience Thinks」から7つのヒントを引用している。この本はビジュアルコミュニケーションの心理学的見地からPowerPointのスライドのよい作り方が示されていて興味深い。
コスリン教授も数々のできの悪いPowerPointを見てきたそうだが、どんなスライドでも簡単に改善することができるのだそうだ。以下、7つのヒントを見ていこう。
並んでいるものは同じグループと見なされる
人間には近くに並んでいる言葉や絵を同じグループと認識するという性質がある。たとえば、"AAA BBB"という文字を見たら、AAAとBBBの2つが同じ分類で存在すると認識するのだそうだ。つまり、スライドでたまたま並んで配置されているものは自動的にグループと受け取られるということ。それが意図的であればよいが、意図と異なる場合は誤解が生じる原因となる。並べて配置する際には気をつけよう。
聴衆を関与させる
聴衆に急に質問をして、受け身で聞いているだけの聴衆をアクティブな参加者に変えることはよく経験すると思う。プレゼンの最初に聴衆への質問から入る発表者が典型であろう。コスリン教授のおすすめは、あるトピックに対して賛成か反対かを挙手させるというテクニックだ。これなら簡単だし、フィードバックももらえる良いアイデアだ。
読みやすくする
28ポイント以上の文字にすること。大文字、イタリック、ボールドを1行に3、4単語以上使わないこと。これらの文字は似ているので読みにくいという。たしかに大文字のみで書かれた文章は読みにくいのは実感がある。
目には優しく
真っ暗な部屋でスライドの背景を白にするとギラギラして目に不快で、残像が残ったりするのでやめよう。部屋の明かりが一部付いている時は背景が白でもよい。
箇条書きは使いすぎない
箇条書きはキーコンセプトや事例を述べる時に使うもの。形だけ箇条書きになっていても、中身に文章がずらずらと書かれてあってはいけない。
絵の重要性を忘れない
キーコンセプトは絵と文字の両方で書くのがよい。どちらか1つよりも両方あったほうが、聴衆がより覚えられることが研究によりわかっている。
藍色は避ける
濃いブルーで書かれた文字や絵に人間は焦点を合わせられないことが知られている。絵の周囲がぼやけるそうだ。
グラフは適切に
伝えたいことが明確な場合のみグラフを使う。このグラフは何を言いたいのだろうと聴衆に考えさせるようではいけない。
最後に、コスリン教授からのおまけのアドバイス。
less is more
すべてのスライドにおいて、メッセージに磨きをかけて少なくすると、効果が大きい。
スライドの問題ではない、聴衆が何を求めているか、である
これだけ聞くと「今までのヒントは何だったの?」的な気もするが、やはり、プレゼンの極意は"おもてなしの心"にあるようだ。
今一度、手元にあるスライドを上記のヒントにしたがって見直してみてはいかがだろう。