日本オラクルは10月19日、旧サン・マイクロシステムズ製品へのコミットメントを新たに表明、世界初の16コアスレッドを実現した「SPARC T3プロセッサ」「SPARC T3システム」、オペレーティングシステム「Oracle Solaris」、次世代ストレージ製品群「Sun ZFS Storage Appliance」を発表した。同社 専務執行役員 システム事業統括 大塚俊彦氏は「買収直後から、オラクルはサン製品に技術的投資を継続すると表明してきたが、今回の一連の製品発表はそれをコミットメントするもの。ハードウェアとソフトウェアが完璧な形で融合した"ベスト・オブ・ブリード"なソリューションを提供し、お客様のビジネスパフォーマンスの向上に寄与したい」と語る。

大塚氏は、「ハードとソフトのインテグレーションが実現した今、我々が提供する製品は、性能、可用性、セキュリティ、運用管理のいずれにおいても、最先端の技術を最適化された状態で提供できる準備が整った」と語り、引き続き旧サン製品、とくにハードウェア製品の性能向上を図るために積極的な投資を行う姿勢を明らかにした。

会見のために来日した米Oracleでポートフォリオ戦略 シニアディレクターを務めるシェーン・シグラー(Shane Sigler)氏は「私はSun出身だが、Oracleとの統合は非常にエキサイティングな体験だった。我々はハードとソフトを互いに完璧に最適化した状態で提供することができる。今回のリリースを皮切りに、ステップを踏みながら最高のエンジニアリング製品を届けていきたい」としている。

日本オラクル 専務執行役員 システム事業統括 大塚俊彦氏

米Oracle ポートフォリオ戦略 シニアディレクター シェーン・シグラー氏

サン統合後のオラクルが掲げる新たなタグライン(ポリシー)は"Hardware and Software - Engineered to Work Together"

SPARC T3

SPARCチップにOracleの名前が!! 最大16コア/128スレッド、周波数は1.65GHz

今回の発表された製品のうち最大の目玉は、業界初の16コア/128スレッドを実現したSPARC T3プロセッサだろう。Oracleの名が刻まれた初のSPARCプロセッサとなるわけだが、「前世代のSPARC Tシリーズに比べて2倍のスループット、4倍のI/Oバンド幅の増強を実現した」とシーゲル氏が強調するように、大幅に向上したパフォーマンスが最大の特徴だ。とくにオラクル製品らしくデータベースへの最適化がさまざまな面から図られており、オンチップ暗号アクセラレータ搭載による高速暗号化、10GbEコントローラの統合などが実現している。

このSPARC T3を搭載したサーバシステム「SPARC T3システム」も同時に発表されており、1ソケット16コアのブレードサーバから4ソケット64コア搭載の5Uラックマウントサーバ(512スレッド)まで4製品がリリースされる。いずれも、Oracle SolarisおよびOracle VM for SPARCが稼働する。Oracle Database、Oracle Fusion Middleware、Oracle Appllicationsと統合されており、アプリケーション統合や仮想化において威力を発揮する。

SPARC T3を搭載したサーバのラインナップ。左からブレードサーバの「SPARC T3-B Blade for Blade 6000」、シングルソケットのエントリモデル「SPARC T3-1」、ミドルウェア統合に適したダブルソケットの「SPARC T3-2」、ミッドレンジ/エンタープライズに適した「SPARC T3-4」の4モデルが揃えられている

シーゲル氏はSPARCチップとそれを搭載したエンタープライズサーバのロードマップについても触れ、「今後5年間においては、2年ごとに2倍の性能向上を果たしたい。5年後、コアは4倍に、スレッドは32倍に、そしてJavaオペレーション速度は10倍に伸ばすプランを立てている」と宣言、ハードウェアとソフトウェアの融合がもたらすメリットを生かしてよりデータベース最適化をはかり、スケーラビリティでもアドバンテージを取っていきたいとしている。

SPARC T3システムのロードマップ。2年間で2倍の性能向上を目指す

Oracle Solaris

こちらも新たにOracleの名が冠されたOracle Solaris。2011年には「Oracle Solaris 11」の提供を開始し、グローバルに展開する予定になっている。その準備段階として、2010年度末に「Oracle Solaris 11 Express」を提供し、Solaris 11の最新技術を顧客(Oracle Solaris旧バージョンユーザ、Open Solarisユーザ)に体験してもらうとしている。オラクルによれば、Solaris 11には2,000万時間以上の開発と6,000万時間以上のテストを行った成果として、2,700以上のプロジェクトと400以上の新技術が搭載されることになっている。

オラクルはSolarisを「次世代の仮想化エンタープライズOS」と位置づけており、クラウドコンピューティングの流れに伴い、"仮想化に強いOS"として前面に押し出していく構えだ。「可用性、スケーラビリティ、パフォーマンス、効率性、セキュリティなど、ミッションクリティカルな業務で求められる要素を高いレベルで実現した、イノベーションのバーを引き上げたOSだ」(シーグル氏)

こちらはSolarisのロードマップ。おそらく来年初頭にはSolaris 11 Expressが顧客や開発者向けに提供されると見られている

Sun ZFS Storage Appliance

拡張性とコストパフォーマンスにこだわったという、統合型ストレージアプライアンス。4モデルが用意されている。Oracle Linux/Oracle Solaris、Oracle VM、Oracle Database、Oracle Fusion Middleware、Oracle Applicationsなど、あらゆるオラクルソフトウェアに最適化している。

ストレージアプライアンスの「Sun ZFS Storage Appliance」には4モデルが揃っている。パフォーマンスは50%向上し、ストレージ容量は2倍になったという