シャープ 健康・環境システム事業本部 副本部長 浅野豊氏

シャープは10月18日、加湿空気清浄機の新製品4機種を発売した。 「例年ならば8月に新製品を発表するが、10月に製品を発表したのはシャープの空気清浄機へのこだわりによるものだ」と、健康・環境システム事業本部 副本部長 浅野豊氏は切り出した。

「猛暑の翌年には花粉飛散量が多くなり、全国では前年の約5倍、関東地区では7~8倍、近畿地区では約10倍という飛散量の増加予想に対応するため、ギリギリまで機能強化を図り、10月の発表となった。2011年は花粉飛散量の増加によって、空気清浄機の吸塵性能が重視されることになる。吸塵スピードと除菌・脱臭の基本性能を高めることに新製品のコンセプトを置いた」

新製品では、気流のロスを抑える「新・ロングノズル」、背面の吸い込み口へハウスダストを誘導する「気流誘引ガイド」を組み合わせたエアロフォルムの採用で空気の循環を効率化。電気代と運転音を抑えながら、約30%拡大した「背面全面吸い込み」により、吸塵スピードを昨年比約1.3倍に高め、花粉やハウスダストを素早く除去する。

シャープ 加湿清浄機の新製品ラインアップ

新製品の新・ロングノズル、気流誘引ガイド、背面全面吸い込みによる吸塵の仕組み

新・ロングノズルで素早く集めることが可能

吸い込んでいる様子。壁にぴったりくっつけても吸い込む

健康・環境システム事業本部プラズマクラスター機器事業部商品企画部 部長 冨田昌志氏

さらに、イオン濃度7,000個の「高濃度プラズマクラスターイオン7000」を搭載。60分間で室内のイオン濃度を7000個の約1.5倍に高濃度化するプラズマクラスターシャワーにより、帰宅時などに短時間で浮遊アレル物質、浮遊ウイルスなどの空気の汚れを浄化する。

「中回転では7,000個の濃度だが、高回転にすれば前面上部から強い風量でイオンを放出し、部屋全体で約1.5倍の濃度を実現する」(健康・環境システム事業本部プラズマクラスター機器事業部商品企画部 部長 冨田昌志氏)という。

さらに内部の手入れが簡単で、持ち運びがしやすいようにハンドルを付けた新・給水タンクも採用されている。同時に給水した場合に10kg前後となる空気清浄機本体を移動させやすいように本体キャスターを付属し、室内移動の利便性を図ったわけだ。

新・給水タンクにはハンドルを付けた

新・給水タンクは持ち運びや水を入れる場合の使い勝手にもこだわった

また、部屋の湿度、ホコリ、ニオイの状態が一目でわかる「うるおいキレイ実感モニター」を搭載し、同モニターに「加湿中お知らせモニター」を加えることで加湿状況も簡単に確認できるようにしている。

部屋の湿度、ホコリ、ニオイの状態がひとめでわかる「うるおいキレイ実感モニター」

21畳用のKC-Z80-W、17畳用のKC-Z65-W/B、13畳用のKC-Z45-W/B、11畳用のKC-Z40-Wの4機種が用意されている。価格はすべてオープンプライスだが、最上位のKC-Z80-Wの市場想定価格は7万5000円前後。4機種合計で月産4万8,000台の計画としている。

同社は、2010年10月1日付けで家電事業の大幅な組織変更を行っている。それが同社のプラズマクラスターイオンへの本気ぶりを証明することにもなっている。同社の白物家電事業は、1984年に電化システム事業本部として展開。2008年に健康・環境システム事業本部に名称を変更していたが、電化システム事業本部時代から26年間にわたり、冷蔵庫(冷蔵システム事業部)、エアコン(空調システム事業部)、調理家電(調理システム事業部)、洗濯機(ランドリーシステム事業部)の4事業部体制は変わらなかった。

それが今回の組織変更では、プラズマクラスター機器事業部を新たに設置。四半期世紀ぶりの組織体制の改革によって、5事業部体制とした。同社の技術あるいは製品名を組織の冠にするのは、同社では珍しいことだ。

10月1日付けでプラズマクラスター機器事業部を新設した

浅野氏は、「これまでプラズマクラスター機器はエアコンを担当する空調システム事業部に入っていたが、これを独立させて、空気清浄機、イオン発生機とともに、ブラズマクラスターイオンデバイスの外部への販売なども担当する。今後、プラズマクラスター機器の海外展開などにも積極的に乗り出していくことになる」と説明する。

2009年度の空気清浄機の販売台数は前年比約2倍、イオン発生機は約5倍という成長を遂げており、すでに空気清浄機およびイオン発生機の売上規模は、健康・環境システム事業本部の約22%の構成比に達している。

「これまでは効果を感じないという人が多かったが、2006年度以降、実感性能の向上と効果の見える化によって、室内の清浄スピードに対して満足していると答える利用者が増えている。2000年度から2009年度までに国内市場全体で販売された空気清浄機は約1,600万台。そのうち、2台に1台がシャープの空気清浄機になっている。空気清浄機の家庭普及率は36.6%だが、早い段階で50%の普及率に持っていきたい」(浅野氏)

2010年度の国内空気清浄機の市場規模は、前年の217万7000台から3.5%減の210万台と予想。そのうち、加機能付きは台数で約80%、金額で約85%と予想しており、前年の台数70%、金額80%から上昇すると見ている。浅野氏は「シャープは、そのうち50%のシェアとなる約100万台を目指す」と述べた。