パナソニックは10月12日、製造現場の組立作業の自動化を目的に、従来は人が行っていた複雑で多彩な作業の自動化に際し、手づたえにより作業手順を簡単に教示でき、自由な空間姿勢が表現できるパラレルリンクロボットを開発したことを発表した。今後、国内外のグループ工場を中心に展開を図り、高効率生産を目指していくという。
セル生産における組立工程では人による作業が一般的だが、作業員の能力が一定でないため、作業バラつきや作業効率などの課題がある。しかしそれをロボットで行うためには、複雑で多彩な作業を自動化する必要があり、ロボットに組み立て手順を指示する専門知識が必要であった。
今回開発したロボットを活用することで、ロボットそのものに簡単かつ安全に手づたえで教示することが可能となり、製造現場のオペレータでも手間をかけずに、作業者のコツを教示することが出来るようになると同社では説明しており、これにより作業バラつきが抑えられ、製造現場の生産性向上・コスト削減が可能になるという。 従来から、ロボット自体を直接触って動かすことで、教示を行うダイレクト教示手法はあったら、その多くが重いアームを支えて、モータの抵抗を受けながら教示を行うため、繊細で複雑な作業を教示することが困難であった。また、軽い操作感を得るために、電気的な制御を行い、負荷バランスをキャンセルする方法も提案されているが、ロボットの暴走などの問題が懸念されていた。
今回、同社が開発したロボットでは、6つのモータを内蔵し、それぞれのモータにアームを接続する、6組のアームが1枚の先端プレートに並列に接続する形態「パラレルリンク」を採用。東北大学と共同開発を行った制御技術を用いることで、6つのモータを同時にコントロールし、目的の位置や姿勢を表現することが可能となった。作業空間内で、どのような作業にも対応するためには、6自由度が必要だが、同ロボットは6つのモータで6自由度を表現できるため、自由な姿勢が表現でき、人作業のような複雑な姿勢にも追従することが可能となった。
また、作業者がロボットの先端部を把持して、その動作位置や軌跡を教示することで、利便性を高めることにも成功している。具体的には対象物をつかむハンドが取り付くアーム先端部が、本体の真下にあり、アームやアーム先端部を軽量な構造としているため、この部分を把持して、楽に位置教示することが可能となっている。また、サーボ解除の状態で教示をするため、暴走などの危険性がなく、安全に教示作業を行うことが出来るため、多品種少量生産形態のユーザに対して、簡単に教示ができる仕組みを提案することによって、使用できる用途の拡大が期待できるという。
さらに、同ロボットは、モータ、軸受、アームなどのシンプルなメカ部材で構成されているほか、それらの取付け部材などを含め、部品点数を絞り込むことで、直接材料費と組立工数を低コスト化している。シンプルな構造を採用したことで、故障などのトラブルが生じるリスクも小さくなっているほか、ロボットの本体(寸法概略:600mm×700mm×600mm)についても、幅をセル生産工程にも導入しやすいサイズに設定することで、可動範囲が本体幅以内に収め、本体幅程度の防護柵で運用することが出来るようになっているため、作業者との共存性も可能となっている。
加えて、可動範囲はφ400mm×150mm、姿勢は各軸周りに±20°を実現しつつ、位置再現性は±20μm、可搬重量1.5kgを実現している。