ルネサス エレクトロニクスは10月7日に東京の本社で記者会見を開催し、化合物半導体デバイス事業の事業戦略を発表した。なおルネサス エレクトロニクス(新ルネサス)は、NECエレクトロニクス(NECエレ)とルネサス テクノロジ(旧ルネサス)が2010年4月1日に合併して誕生した大手半導体ベンダである。

化合物半導体デバイス事業は、新ルネサスのアナログ&パワー事業本部に属する化合物デバイス事業部が手掛けている。ちなみにアナログ&パワー事業本部は、2010年度(2011年3月期)に新ルネサス全体の売上高1兆900億円(見込み値)の約31%を占める。化合物デバイス事業部はアナログ&パワー事業本部の売上高の約6分の1を占めているので、新ルネサス全体からみると5.17%の比率になる。金額に換算すると563億円である。

記者会見では執行役員兼アナログ&パワー事業本部長の宮路吉朗氏が最初に挨拶し、続いて同事業本部の化合物デバイス事業部長をつとめる細野泰宏氏が説明にあたった。

ルネサス エレクトロニクス 執行役員兼アナログ&パワー事業本部長 宮路吉朗氏

ルネサス エレクトロニクス アナログ&パワー事業本部 化合物デバイス事業部長 細野泰宏氏

アナログ&パワー事業本部の組織

化合物デバイス事業部の製品は大別すると、光半導体製品、マイクロ波化合物半導体製品、マイクロ波シリコン半導体製品に分かれる。2009年度実績の売上高比率はそれぞれ43%、39%、18%である。製品の内訳から分かるように、化合物デバイス事業部の取り扱い製品には化合物半導体だけではなく、シリコン半導体も含まれる。「化合物デバイス」とあるものの、実際には光デバイスと高周波デバイスの事業部だと考えるべきだろう。

化合物デバイス事業部の主要製品シェアと売上構成。2009年度におけるフォトカプラのシェアは2位、高周波スイッチICとGaAs低雑音FETのシェアはトップにつける

化合物デバイス事業部の中期計画では、2010年度~2012年度に売上高を年平均11%で成長させる計画であることが示された。2010年度の売上高を仮に563億円とすると、2012年度の売上高は694億円になる。

成長を支える事業方針としては、シェア2位のフォトカプラを2011年度にシェアトップに押し上げるほか、すでにシェアトップの高周波スイッチICとGaAs低雑音FETは首位を堅持すること、GaNデバイスを新たに投入して売り上げを拡大すること、といった説明があった。フォトカプラは製品系列の拡充、海外市場の販売拡大、生産能力の大幅増強によってシェアトップを狙う。高周波スイッチICは特性の改良とパッケージの小型化でシェアトップを維持していく。

化合物デバイス事業部の中期計画。2010会計年度から2012会計年度まで、年平均成長率11%で売上高を伸ばす。製品分野別では、フォトカプラを年平均成長率14%と大きく拡大させる

化合物デバイス事業部の事業方針

フォトカプラとは何かの説明

フォトカプラの用途

フォトカプラのシェアをトップに押し上げるための戦略

高周波スイッチICの用途

携帯電話端末のアンテナ用スイッチの特性を改良していった実績と今後の展望

高周波スイッチIC用パッケージの小型化実績と今後の展望

新規参入するGaNデバイスは、高周波パワーFETに適しているとした。ケーブルテレビ(CATV)用アンプを初めに製品化し、続いてマイクロ波帯用パワーFETを開発する。準ミリ波帯のパワーアンプとミリ波帯モノリシックマイクロ波IC(MMIC)の開発も視野に入れている。具体的な売上高目標は明らかにしなかったものの、SiCやGaAsなどでは実現しにくい領域で製品を展開し、売り上げを拡大していく。

GaNデバイスの特長

GaN高周波デバイスの開発方針。6インチのSiウェハを使うことで、現在のGaNデバイスに標準的に使われている3インチ~4インチのSiCウェハに比べて大幅に製造コストを下げる

GaN高周波デバイスの開発ロードマップ