アドビ システムズのビデオ制作用アプリケーション「Adobe Premiere Pro CS5」の新機能を数回に渡り徹底紹介。今回は、前回紹介したHDフォーマットでの快適な操作性を確保するための機能に続き、ファイルベースフォーマットへの対応について紹介していく。
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一眼レフカメラの動画や放送用ビデオに幅広く対応
いま業界では「ファイルベース」という言葉が流行している。従来から使われてきたテープレスという意味だが、新しいワークフローを積極的に受け入れようとしているようで、ファイルベースという新しい言葉が使われるようになった。CS5では、2009年夏辺りから話題が尽きなかった、デジタル一眼レフカメラの動画記録フォーマットに対応している点が目立つ。デジタル一眼レフカメラは、ビデオカメラと違って大きなサイズの撮像素子を使用しており、S/Nがよい点、被写界深度が浅めで背景をぼかしやすく、またフィルムに似たガンマ特性を持たせることで白飛びが起こりにくく、色の乗りがよいなどの特徴があり、映画に使用するフィルムカメラのような美しい映像の撮影が可能となる。そのためCM制作を中心に、デジタル一眼レフカメラを使用する機会が多くなってきた。中でもフルフィルムサイズの撮像部を持つことで知られるキヤノンの「EOS 5D MarkII」に対応しているのはうれしい。他にもニコン「D90」など、人気の高い一眼レフカメラの動画フォーマットに対応している。
またXDCAMやP2メディアなどの、次世代の放送用フォーマットへのネイティブ対応が新たに行われている。すでにCS4では、業務用として使われているソニーXDCAM HDの18、25、35Mbps(4:2:0サンプリング)モード、および同社製XDCAM EXの25、35Mbpsモード(こちらも4:2:0サンプリング)には対応していたが、今回は新たに放送用として設計されたXDCAM HD MPEG-4:2:2 (50Mbpsモード)にも対応した。同様に、CS4ではパナソニックのP2メディアにも対応していたが、扱えるのがDVCPRO HD圧縮のビデオファイルだけだった。これに対して今回は、放送用ENGカメラに使用されている、AVC INRTA圧縮のビデオファイルにも対応。そのほか、デジタルシネマに使われるDPXフォーマットへの新規対応や、キヤノン製のXFシリーズ用MPEG-2ファイルへの対応など、業務・放送用として使われるビデオフォーマットに、幅広くネイティブ対応している。
メディアブラウザでファイルベース素材を簡単にインポート
ファイルベースになると、素材の扱い方が複雑になる。従来はテープからキャプチャした単体のAVIファイルを使うか、QTなどの、これまた単体の映像ファイルを読み込んで編集していた。ユーザーから素材映像の実体が見えていたのである。しかしファイルベースの映像素材は、MXFなどのラッパーに包まれ、さらに特定のフォルダ構成に収められている。そのためメディアのデータをHDD上にコピーするまではよいが、その後の扱いに困ってしまう。
そこでファイルベースの素材については、メディアブラウザを使って素材の確認を行い、ビンに読み込むことになる。メディアブラウザ自体はCS4にもあったが、今回はパナソニックのP2やソニーのXDCAM HD MPEG-4:2:2を記録した部分も、マウスをダブルクリックするだけで映像がソースモニターに表示され、確認を行えるのである。
特定のフォルダ内に格納されて見つけにくい映像データを、メディアのドライブを選択するだけで表示してくれる。見たいクリップをダブルクリックすると、ソース画面に表示されて確認が容易。必要な素材を選んでビンに読み込める |
ファイルベースという、映像制作業界のイノベーションに対応すべく、多くのプロ用ビデオフォーマットがサポートされ、実用性がさらに高まったことを実感した。ただし今回は32ビットOS用に設計したPCを使用したために、Premiere Pro CS5の最も改善された部分であるMercury Playback Engineの使用感を味わえなかった。次回はUltraキーやこっそりとアップグレードされた便利な機能についてレポートしていく予定だ。