東レと新日本科学は、カニクイザルの薬物代謝酵素遺伝子であるcytochrome P450(CYP)の発現を一括して検出できるDNAチップシステムの開発に成功したことを発表した。
これは、東レが保有する高感度DNAチップ「3D-Gene」技術と、新日本科学が取得したカニクイザルの遺伝子情報技術を組み合わせることで可能となったもので、このカニクイザルCYP遺伝子検出DNAチップシステムの開発により、前臨床試験の安全性評価において、医薬品候補化合物の薬物代謝および毒性を効率良く迅速に解析できるようになると両社では説明している。
近年、臨床試験における開発コストは増加傾向にあり、新薬の開発効率の向上が求められており、その対策として、前臨床試験において、開発医薬品の安全性を早期かつ短期間に、そして的確に評価することの必要性が高まってきている。
安全性評価項目の1つである薬物相互作用の確認は、培養細胞や実験動物を用いて行われる。複数の薬物間で薬物代謝酵素を共有することで生じる競合阻害などにおいて重要な役割を果たすCYP遺伝子は、その機能に種差があることが知られており、ヒトとげっ歯類では薬物代謝反応が異なる場合がある一方、霊長類であるカニクイザルの薬物代謝反応は、前臨床試験で用いられるげっ歯類、イヌと比較すると、よりヒトに類似しており、その遺伝子配列もヒトに近似していることが知られていた。
今回、2社が開発したカニクイザルCYP遺伝子を検出するためのDNAチップシステムを用いることで、カニクイザルの臓器別CYP遺伝子の発現分布を確認する実験や、細胞に対する薬剤投与におけるCYP遺伝子の発現誘導を検出する実験を行い、DNAチップによる検出結果が定量PCRと対比可能であるほか、搭載したカニクイザルCYP遺伝子を一括解析できることが確認してされている。
なお、同システムは、第37回日本トキシコロジー学会学術年会において報告、製薬業界からも評価を得ており、今後、2社は同システムを用いた前臨床試験の受託事業を共同で開拓、国内製薬企業をはじめとして、海外へも展開する予定としている。