市原隼人が声優に初挑戦することで話題になっている映画『ガフールの伝説』が10月1日、いよいよ公開される。本作品は人気シリーズ小説であるキャスリン・ラスキーの「ガフールの勇者たち」を原作としたファンタジー・ファミリー・アドベンチャー作品。監督を務めたザック・スナイダーは、映画『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004)や『300』(2007)、『ウォッチメン』(2009)とこれまで数多くのリメイク作品やコミック原作の映画を監督していきた人物。本作品で初となる3Dフルアニメーション作品に挑んだスナイダー監督に話を聞いた。

ザック・スナイダー
ジョージ・A・ロメロ監督の映画『ゾンビ』(1978)を見事にリメイクした『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004)で映画監督デビュー。その後、フランク・ミラーのグラフィックノベルを映画化した『300<スリーハンドレッド>』(2007)や『ウォッチメン』(2009)など、リメイク作品や原作のある作品を多く手掛け、本作がスナイダー監督初となる3Dアニメーション作品。2011年には映画『サッカーパンチ』の公開が控えている

――スナイダー監督はこれまで映画『ドーン・オブ・ザ・デッド』や『300』など、リメイクや原作ありきの作品を多く手がけられています。原作のある作品を映像化する際に苦労する点はどのようなところでしょうか。

ザック・スナイダー(以下、スナイダー)「原作のエッセンスをいかに伝えるかということが凄く難しいんです。例えば、本なら原作者がなぜこの本を書いたのか、その原作者のインスピレーションとなったものはなんだったのか。そういったことを汲み取り、かつ自分が読んだときにどういうことを感じたのかを表現していくんです」

――本作は、自身初となる3Dでの上映が決定しています。実際に3D作品を制作された感想を教えて下さい。

スナイダー「アニメーション作品はPC上で制作するため、3Dカメラをどう使うかという制限がまったくなかったので、バランス感覚が大切でした。次回作である映画『サッカーパンチ』は2Dですが、その次の作品ではまた3Dに挑戦してみたいなと思っています」

――ここ最近では3D映画がトレンドとなっており、多くの作品が3D化されています。監督が考える3Dに向いている映画とはどういった作品ですか。

スナイダー「3Dにするべき映画というのは、独特な世界観を出さなくてはならない作品だと思います。もちろんアクションシークエンスを3Dにすることで、より迫力のある映像を作り出すことができるのですが、例えば『アバター』のようにまったく別世界へ行って、その世界をリアルに描きたいのであれば是非3Dで制作するべきだと思います」

――本作品はフルアニメーション作品にも関わらず、実写作品のようなカメラワークが印象的でした。

スナイダー「この作品はカメラワークを非常に意識した作品です。どのようにカメラワークに制限をつけるかというルールを厳密に作っていったんです。描く世界が異質な世界、遠い世界なので、リアルなカメラワークでないと観客が迷ってしまうというか、ちょっと行き過ぎてしまうので、そこは気をつけましたね。例えば、カメラが風に吹き飛ばされそうになったり、ほかにも夜のシーンが多いので、その分あえて奥行き感を出さないようにしました」

映画『ガフールの伝説』

メンフクロウのソーレンはいつの日か自分も伝説のヒーローたちと一緒に戦いたいと夢見ていた。そんなある日、巣から兄クラッドとともに木の上の巣から落ち、"純血団"と名乗る、邪悪なフクロウの集団に捕まってしまう。なんとか逃げ出すことに成功したソーレンは、純血団を倒すため、伝説の勇者たちが住むという"ガフールの神木"を見つける旅に出る

――本作品の制作にあたり、苦労した点や大切にしたことはなんですか?

スナイダー「一番難しかったのは"アドベンチャー"の要素と"アクション"の要素を組み込みながらファミリー映画に仕上げるということですね。結果的にアクション映画でありながら、ちゃんとしたファミリー映画になっていると思います。また、これまでの作品ではビジュアル的にどういう風にみせればいいかということを中心に考えながら作ってきましたが、この映画には哲学的なメッセージがあり、それをどう入れ込むかということを考えなければいけなかったので、それも難しかったですね」

――最後に日本の若手クリエイターにアドバイスをお願いします。

スナイダー「ハリウッドは同じような作品を好みがちだと思われていますが、そんなことはなく、常に新しいもの、フレッシュなものを求めています。そのため、常に自分独自の視点を持つことが大事です。自分の価値観、自分独特のものの見方などを大事にして映画作りをしてほしいと思います」

映画『ガフールの伝説』は10月1日より、丸の内ルーブル他全国ロードショー。

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