ルネサス エレクトロニクス 執行役員 兼 SoC第一事業本部長の山田和美氏

ルネサス エレクトロニクスは9月30日、社会インフラストラクチャ向けSoCの中でも特に通信インフラと産業インフラ向け事業の強化施策を策定したことを明らかにした。

社会インフラ向けにSoCを供給する同事業部を指揮する同社執行役員 兼 SoC第一事業本部長の山田和美氏は、「先端のプロセス技術・IP、設計技術、長期安定供給力などの技術的優位性をベースに、社会インフラ事業に注力していきたい」とし、中でも長期安定供給力(QCD:Quality、Cost、Delivery)については、「単に供給するというだけでなく、長期的に行っていくことをコミットメントすることで、社会インフラ事業としての通信インフラ、産業インフラ、マルチメディアに注力していきたい」とする。

同社SoC第一事業本部としては、事業体の大きさを生かした安定供給の保証と技術力を通じて、長期間供給が求められるインフラ向けに製品を展開していく

通信インフラについては、現在高いシェアを有しているネットワークメモリとUSB向けSoCへの注力を図っていく。これについて「もともと旧ルネサス テクノロジ(RT)、旧NECエレクトロニクス(NECEL)の時代より、我々はクラウドのハードウェア(ネットワーク機器やストレージ)に対する分野に向け、ネットワークメモリやUSB向けSoCで高いシェアを有していた。スマートグリッドなども何かをつなげるという意味では今後も入ってくる。そうした意味で、こうした何かつながるという分野に対してのシェアは元々高く、統合により旧2社の有していた製品ラインアップが相互補完的に拡充され、ネットワークの基幹部分で重要な位置を占めるようになれたと感じている」(同)とし、今後は中国を中心とした通信大手などにも販売を加速していくことで、ネットワークメモリでは2012年度に現状のシェア40%から60%へと拡大を図っていくほか、USB向けSoCについても現状の15%から2012年度には30%へと引き上げたいとする。

ネットワークメモリに関しては、旧RTがTCAMを、旧NECELがLLDRAMを中心に行っていたこともあり、オーバーラップする製品はほとんどなく、逆に相互補完が上手くでき、幅広い製品に対応できるラインアップとなったという

一方の産業インフラについては、「産業機器向けネットワーク用デバイスついては、ゲートアレイの時代より行ってきており、産業機器に求められるリアルタイム性や信頼性通信などに対応する技術・ノウハウを蓄積している。工場内のオートメーション化が今後、さらに加速することを考えると、既存の産業通信規格などにも対応できることを目的にEthernetベースの新規格としてEthernet PHYを開発。これをIPとしてSoCに手狂したものを11月よりサンプル出荷を開始する計画であり、これまでの強みを加味することで、現状の産業向けSoC全体シェア25%を2012年には30%に拡大したい」(同)とする。

Ethernet PHYをIPとして搭載したSoCの提供により、プロセスラインコントロール分野などでの適用拡大を狙う

また、成長が見込まれるスマートグリッド市場については「地域性や各国政府の思惑、ユーティリティの問題などがあるが、確実に伸びる市場で、現在米国と中国に展開している事業を、今後欧州などへと発展させ、市場シェアの拡大を図り、将来的には売り上げカテゴリとしてスマートグリッドが作れる規模に成長できれば」(同)とする。

スマートグリッドなどの成長が見込める市場に対してもさまざまなデバイスを組み合わせた製品ソリューションとして提供することでシェア拡大を狙う

同氏は、旧2社の統合により、「結果的に我々の事業については、製品については無駄なオーバーラップが発生せず、補完関係を構築することができ、さらなる強みを出せるようになった」(同)とするほか、全社的なトータルソリューションとしての展開がしやすくなったほか、SoCの設計についても、「旧2社の良いとこ取りができるようになり、テストコストで従来比で平均20%減、チップサイズもチップ構成のためのセルをルネサス テクノロジ側で高さの低いものを作っていた経緯があり、低い分だけ性能が下がるがチップはすべての領域で高い性能は必要がないため、そうした部分にそうした技術を活用したり、メモリのサイズも(旧2社で)縦横比で異なるので、最適なものを選択し、活用することができるようになったりしたため、従来比で平均10%減となっており、トータルコストでも同約30%減を達成できるようになった」(同)とし、すでに統合によるメリットがSoC事業では出てきていることを強調する。

統合のシナジーによるコスト削減などの効果もすでに発揮されているという

こうした統合によるメリットは、プリンタ向けASICや光学ディスクドライブ(ODD)向けASICについても、「従来のカスタマが異なっており、顧客数の増加につながっている」(同)ことを強調。「最大のポイントはIPのラインアップが、基本的なものは被ってしまうが、それぞれの分野に特化したところは相互補完ができるようになっており、そうしたものを柔軟に活用することができるようになり、よりカスタマニーズに合ったものを作るようにできるようになった」(同)とし、そうした幅広い資産を活用していくことで、強みを持つ市場をさらに伸ばしていき、売上高を2010年度から2012年度にかけて年平均で6~7%成長させていきたいとしている。

2010年度の同事業の売り上げ規模は1700~1800億円程度で、同第二事業本部と併せてSoC事業全体で3500億円を見込んでいる。2012年度には第一事業本部だけで2000億円レベルの規模を目指す