Analog Devices(ADI)は9月29日、250MSpsを実現した逐次比較型16ビットA/Dコンバータ(ADC)「AD9467」を発表した。200MSps対応品と250MSps対応品の2種類が用意されており、いずれもすでにサンプル出荷を開始、サンプルの単価は200MSps品が1000個受注時で100ドル、250MSps品が同120ドルとなっている。2010年11月より量産出荷を開始する予定。

「AD9467」のパッケージイメージ

同製品は、高速かつ高精度のA/D変換を目指したもので、SiGe BiCMOSプロセスとSi CMOSプロセスを組み合わせてパイプラインなどの回路各所の最適化を図ることで、従来品比で25%高速となる250MSpsを実現しながら、競合メーカーにおける最高クラスの16ビット200MSps品比で消費電力を38%低減する1.35W@250MSpsを実現している。

AD9467と他社の最高クラス(16ビット/200MSps)のADCとの各種性能比較

また、最大100dBFs のSFDR(スプリアス・フリー・ダイナミック・レンジ)と76.4dBFsのSNR(S/N比)を実現しているほか、SFDRは300MHzまでのアナログ入力信号において90dBFs、ジッタ(信号の揺らぎ)は60fs rms(二乗平均値)を実現している。このジッタの値に関してアナログ・デバイセズコアマーケット統括部セントラル・アプリケーションズ マネージャの藤森弘己氏は、「変換タイミングのズレが生じれば、サンプリングの電圧にもズレが生じる。例えば、10MHzの信号を16ビットの精度でA/D変換するためには、ジッタはおよそ200fs以下でなければならないが、1ps以下の実用化はかなりの困難がつきまとう」とし、同製品の高い精度を強調する。

また、シンプルな回路構成ながら、ENOB(Effective Number of Bit:有効ビット数。AC領域のリニアリティ)を最適化するため、最適化されたIF(中間周波数)サンプリング回路とアナログ入力バッファ回路を内蔵することで、ユーザーの設計負担を軽減しているほか、SFDRの改善によりIF帯のアプリケーションにも対応することが可能となっている。

さらに、フルスケール入力範囲をプログラムできることで、SNRとSFDR間のトレードオフを実現。より高精度で、小さな標的の捕捉/追従することが可能となるため、高感度なレーダ・システムの設計が可能となることから、すでに、諜報情報収集・監視・偵察用途向けの、オープンかつ即座に導入可能なmulti-INT(マルチプル・インテリジェンス:複数の情報収集機能を実現できる)サブ・システムのプロバイダである、Mercury Computer Systemsが評価を開始しているほか、National Instruments(NI)も同社FlexRIO製品向けに同製品を組み込んだモジュールの開発を表明している。

すでに各種業界のカスタマによる評価も進んでいる

このため、日本でも主な市場としてスペクトラム解析などの計測装置やSoCのテスタなどを中心に想定しているほか、「すでに海外では4GやLTEと既存世代を併せたマルチキャリア向けプラットフォームの開発なども進んでおり、日本でも4G向けプラットフォームなどへの搭載を目指したい」(同)としている。

AD9467が狙う主な市場

このほか、ハードウェア/ソフトウェアをセットにした評価ボード「AD9467-200EBZ」「同-250EBZ」を用意しているほか、動作や性能確認済みのシステム全体の回路集やクロックやアンプの評価が可能な「Circuits from the Lab」の提供やオンラインADC ビヘイビアモデル「ADIsimADC」への同製品の対応、周辺回路用のWebデザインツールなどの提供を行っており、包括的にカスタマの設計負担を軽減する取り組みが進められている。

複雑化する高速アナログ変換に対し、各種ツールなどを提供することでカスタマが設計・開発を少しでも容易にできるようにしている

なお、評価ボードは200EBZ、250EBZともに1ユニット受注時で300ドルとなっている。