Silicon Laboratories(Silicon Labs)は9月29日、民生機器向けに高品質オーディオを提供することを目的とした5WステレオクラスDアンプ「Si270x」ファミリ4製品を発表した。同製品はすでに24ピンQFNパッケージにてサンプル出荷を開始しており、1万個時の参考単価は1.17ドルからとなっている。
Silicon laboratoriesのDirector,Audio AmplifiersであるRick Beale氏 |
民生機器向けにおけるクラスDアンプの利用については、高いEMI放射がAM/FMラジオやスマートフォンの動作を妨害したり、EMI規制を順守するためにフィルタやシールドを付加するといった追加コストの必要などが発生していた。「今回、新たに自社内で設計を行うことで、EMIを低減しつつ、高い電力効率を実現することができた。同製品はSilicon Labsにとっても、初めてのクラスDアンプになるが、これにより民生機器にハイエンドオーディオ機器の音質を提供できるようになる」(同社Director,Audio AmplifiersのRick Beale氏)と新製品にかける意気込みを語る。
また、内蔵オーディオDSPにより、「外付けDSPが不要となりイコライザのスピーカ調整によるコスト削減が可能となるほか、ダイナミックレンジコンプレッサによるクリッピングを防止しつつ音の増幅が可能となった。結果として4Wのスピーカで7~8Wクラスの音を出すことが可能となる」(同)とするほか、「3Dサウンドのサポートも可能となっており、民生機器に対して容易に高品質なオーディオシステムを組み込むことが可能となる」(同)ことを強調する。
さらに、「Si270xはチップ単体でなく、システムソリューションとして提供している。例えば、5W×2、ステレオAM/FMオーディオ・パス・サブシステムのリファレンスを用いた場合、FMにしろAMにしろ基板から10cm程度離した程度で、すべての帯域でTDMAの送信ノイズなどの影響を受けることなく、クリアな音質を実現することが可能となる」(同)とのことで、その結果として、既存のクラスDソリューションと比較して放射性妨害波をEMI順守帯域で1/10、FMラジオ帯域で1/100、AM帯域で1/1000に低減することが可能となっており、AM/FMラジオとの共存やスマートフォンへの適合などが可能になっている。
従来のクラスDアンプは特有の高周波数スイッチングにより強いEMIを発生させてしまい、ラジオ信号を妨害しAMから携帯電話帯域の受信を乱してしまうが、「今回、こうした影響を避けるために、4つの階層にまたがるEMI低減スキームを開発した」(同)という。
1つ目としてPWM拡散方式を採用、広帯域スイッチング・エネルギーを従来比で1/10(25dB)程度抑制した。また、これだけでは携帯機器への搭載はまだ難しいことから、調整可能でノイズがないノッチフィルタを採用することで、クリアなAM受信を実現した。これにより、ホストのMCUがラジオの周波数帯域をノッチの少ない部分に合わせることが可能となり、クリアな音質が実現されるようになったという。実際に、リファレンスボードを用いたデモでは、AM波の受信をビルの中で行い、フィルタのオン/オフでノイズのレベルが変化する様を見せてくれた。
さらに、スルーレートコントロールの採用により、スイッチング遷移を和らげることに成功。これにより、電磁波の規制に対応することが可能となったほか、FM波や携帯電話帯域の受信に対応した。
加えて、オーディオ品質の保護と音質の向上を図るため、フィードバック回路を内蔵。これらの技術を用いることで、携帯機器でもクラスDアンプを容易に活用することが可能となったという。
このほか、電力効率を向上させていることから、クラスA/Bアンプベースのシステムと比較して半分のバッテリ数(一般的には8本のものを4本)にしても、再生時間を2.5時間に延ばすことが可能となる。このため、「民生機器においては単3アルカリ電池4本で、最大8.4時間の再生が可能となる」(同)とするほか、バッテリの使用量が減ることから、ACアダプタのコストも従来ソリューション比で40%低減することが可能となるという。
なお、同ファミリの評価キット「Si270x-A-EVB」も325ドルで提供を行っているほか、今後のロードマップとしてデジタルTVなどをターゲットとした10Wおよび20Wに対応する製品の開発を行っていくとしており、2011年にはそれらの製品も発表できる予定としている。