ルネサス エレクトロニクスは9月28日、同社のパワーデバイス事業を強化するための3つの施策を策定したことを明らかにした。
同社のパワーデバイス事業は主力3事業の1つである「アナログ&パワーデバイス事業本部」の売り上げの約1/4を占める事業。今回決定された施策は以下の3つとなっている。
- 低圧から高圧までの製品ラインアップの強化
- 中国での販売体制の強化
- 生産能力の増強
1つ目のラインアップ強化は、4月に行われた同社の統合により旧NECエレクトロニクスと旧ルネサス テクノロジが保有していた製品ラインアップから、さらに低圧から高圧製品までの幅を拡大。低圧パワーMOSFETおよびベーシックIPD(Intelligent Power Device)、高圧パワーMOSFET、IGBTおよびトライアックにおいて2012年度までに合計約1000製品を開発するというもの。これにより、低圧パワーMOSFETでのトップシェアの維持ならびに拡大を図るとともに、高圧製品にも同社のプロセス技術と実装技術を活用した製品の投入を図ることで売り上げの拡大を狙うとしている。
2つ目の中国での販売体制の強化は、同社のグローバルの販売体制強化の一環で、中国での分野別マーケティング体制を構築するというもの。すでに活動を開始しており、家電分野、自動車分野、産業分野、電池分野の4つの拡販チームを設置、本社や中国での企画・開発部門と連携し、中国向け製品の開発を行っていく方針。また、中国マーケティングの人員を2010年より倍増させ、市場ニーズにあった中国向け製品のタイムリーな投入も進め、2012年度の同地域売り上げを2010年度の1.5倍にすることを目指すとしている。
そして3つ目は、前工程として200mmウェハの生産能力を2012年度には2010年度の2倍に増強する計画。また、後工程では、マレーシアの2つの工場の生産能力増強を図るほか、中国のサブコントラクタの活用による海外生産の拡大を図っていくとしている。
同社アナログ&パワー事業本部 パワーデバイス事業部長の青木勉氏 |
こうした施策を決定した背景について、同社アナログ&パワー事業本部 パワーデバイス事業部長の青木勉氏は、「パワー半導体市場は2010年に回復し、以降年率5%程度の安定成長が2012年まで見込める市場」とするほか、「当社の推定では現在ルネサスはパワー半導体市場シェアで6位だが、トップでも10%まで獲得できているかいないかの状況。こうした群雄割拠の状態でルネサスは150V以下の低圧パワーMOSFETではトップシェアを獲得している(IPD製品なども含む)。こうした強みを武器に、パワー半導体全体でのトップシェアグループに入ることを目指す」(同執行役員 兼 アナログ&パワー事業本部長の宮路吉朗氏)と競合が多いことによるこれからの市場であることを強調する。
同社 執行役員 兼 アナログ&パワー事業本部長の宮路吉朗氏 |
そうした状況の中、こうした施策を行うことに加え、低圧パワーMOSFET分野で行っている2素子内蔵や高速ダイオードの内蔵、ドライバICの内蔵といった高機能化、多ピン化、小型化を進めていくほか、直接機器メーカーに赴き技術紹介を行ったり、台湾などの生産拠点へのサポートなどを行うといった方策もすでに行っているという。また、パッケージ技術としてのAl太線の活用や自動車向けでのCuワイヤの活用なども進めていくほか、「SiCやGaNに関する研究開発も進めている。SiCは高周波用FETを2011年度には製品化したいと考えているほか、GaNについてもFREDを2011年度には製品化できれば、と考えている」(宮路氏)とのことで、そうした新材料などの対応も順次進めていくことで、新市場などへの対応も図っていきたいとしている。