米Oracle主催の年次カンファレンス「Oracle OpenWorld 2010(OOW 2010)」が今年も米カリフォルニア州サンフランシスコで9月20日よりスタートした。
もともと同社のデータベースや開発ツール製品を中心にしたパートナーカンファレンスだったものが、同社アプリケーション製品のカンファレンスの統合に加え、PeopleSoft/J.D. Edwards、Siebel Systems、BEA Systemsと立て続けに行われた買収により、それら企業のユーザーやカンファレンスをも取り込み、単独ベンダ主催のカンファレンスとしては超大規模なものとなった。さらに今年はSun Microsystemsの買収が完了したことで、イベントとしてはJavaOneを包含し、製品としてはハードウェアを包含したことで一挙にラインナップが拡大した。Oracle公式発表によれば今年の参加者は4万人以上、米国を含む世界中でもほぼ最大規模のイベントとなっている。
今年のOOWの目玉は前述のように、Sun Microsystems買収後の製品ラインナップやパートナー各社との提携関係の行方だ。これまでOracleといえばMicrosoftに次ぐ世界No.2のソフトウェア企業という位置付けだったが、Sun Microsystems買収によりハードウェアビジネスに参入したことになり、もはやソフトウェア企業という位置付けではなく、IBMやHewlett-Packard (HP)と並ぶソフトウェアとハードウェアを組み合わせた「システム・ソリューション」企業への仲間入りを果たしている。当然のことながら単純にソフトウェアとハードウェアを単にバラ売りで提供するのではなく、今後は両者がより密接に結びついた訴求スタイルを採っていくことになるだろう。その先鞭とも呼べるのが「Exadata v2」た。完全にチューニングされたSunのハードウェアとOS製品にOracleのデータベースを組み合わせた技術で、データベース処理により高いパフォーマンスを要求する顧客のニーズを満たそうとしている。こうしたコンビネーションはデータベースに止まらず、今後はミドルウェアからアプリケーションまで、さまざまなソフトウェアスタックのソリューションを組み合わせた製品が登場することだろう。
目玉の2つめは「Fusion Applications」だ。OracleがPeopleSoftを買収した直後、同社は「Applications Unlimited」という戦略を発表した。これはOracleからPeopleSoft、 J.D. Edwardsまで、既存のアプリケーション製品ユーザーに対して継続的なアップグレードパスを保証するものだ。これは後のSiebel買収に際しても引き継がれ、現在でも定期的に製品メンテナンスが行われている。Oracleの買収により、これら買収された企業のユーザーが強引にOracle製品へと誘導される懸念が表明されていたことに対し、同社が顧客第一主義を掲げて表明した戦略だ。だがこれとは別に、Oracle自身が将来を見据えて新技術を投入して開発を続けている「Fusion Applications」というプロジェクトが存在する。旧式のつぎはぎ中心のアプリケーションを捨て、より新世代のUIとJava技術を組み合わせ、モジュラー形式の新しいアプリケーション製品を構築していこうというものだ。開発自体はPeopleSoft買収が行われた2005年当時から進んでおり、昨年のOOW 2009で米Oracle CEOのLarry Ellison氏自身によってその一部プレビューが公開された。今回は、より踏み込んだ発表が行われるとみられる。
また今回のOOWはJavaOneが併設されており、同時進行で2つのイベントがサンフランシスコ市内で開催される。JavaOneのメイン会場となるヒルトンホテル横では、OOWでは恒例の公道を塞いでの特別テント会場が設けられ、こちらでJava関連のパートナーラウンジが用意されている。JavaOneサイドでは買収完了後のJavaコミュニティに関するコミットがOracleから改めて発表されるとみられるほか、Java以外のオープンソースや関連技術についても何らかのアナウンスが行われるとみられる。これについても、情報が入り次第順次報告していきたい。
まずはOOW開催前夜にあたる18日午後5時半(PDT: 米国太平洋時間)よりLarry Ellison氏、米OracleプレジデントのSafra Catz氏、米HPのAnn Livermore氏によるオープニングキーノートが行われた。本誌でも引き続きレポートしていく。