「Windows Server 2008 R2の登場により、仮想化利用が加速しています」と語るのは、マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 Windows Server製品部 マネージャの藤本浩司氏である。
藤本氏は、「ジャーナルITサミット 2010 仮想化セミナー」において「実践、プライベート・クラウドへの道」というタイトルで講演。Hyper-Vを提供するマイクロソフトならではの仮想化ノウハウを多数紹介した。以下、藤本氏の講演内容を簡単にお伝えしよう。
仮想化利用を加速させるHyper-V
マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 Windows Server製品部 マネージャの藤本浩司氏 |
IDC Japanが発表した調査レポート「国内バーチャライゼーションソフトウェア市場 2008年の分析と2009年~2013年の予測」によると、バーチャライゼーションソフトウェアの市場規模はWindows Server 2008 R2が出荷された2009年9月から、5年間で2.5倍まで拡大するという予測がある。さらに「2009年に仮想化用途で出荷されたWindows Server 2008 R2のうち、約70%がHyper-Vを利用している」との調査結果から、同社製品の普及が進んでいることをアピールした。
藤本氏はその特徴について「Windows Server OS標準のサーバ仮想化技術として豊富なハードウェアを選択できるほか、大幅に向上されたスケーラビリティとパフォーマンス、既存のスキルを活かして効率的な運用管理が行える点などで、お客様から高い評価をいただいております」と語る。
また、Hyper-V統合サービス「IC(Integration Components)」や「Linux IC For Windows Server 2008 R2」の提供、Linux ICのオープンソース化、4CPUに対応したLinux IC(Integration Components) 2.1Betaの実施といった、LinuxゲストOSへの対応も今後の需要拡大につながるだろう。
1年前には国内実績の少なさから導入を躊躇していた企業も多かったが、藤本氏はアステラス製薬、花王、第一生命、三井物産などの例を挙げた上で「日本国内でも大規模な仮想化環境の導入事例が増加し、実績面でも安心してご利用いただけるようになりました」と語る。
ホスト間移動などのメンテナンス性も抜群
続いて藤本氏は、物理サーバとほぼ同じレベルで使えるHyper-V 2.0のパフォーマンス、仮想化環境におけるクラスタリングの重要性を語った後、運用上の課題となるメンテナンス性について解説した。
仮想化環境のメンテナンスでは、Windows Server 2008 R2から実装された「Live Migration」が大きな効果を発揮してくれる。この機能を使えば、VHD(Virtual Hard Disk)が格納された共有ストレージを通じて、動作中の仮想マシンを停止することなく瞬時にホスト間移動が可能。インテル同士、AMD同士であれば、プロセッサバージョンが異なるホスト間も移動できる「プロセッサ互換機能」を備えているので、マシン選択の幅も大きく広がるという。
また、藤本氏は「ディスク内に多くのバックアップや仮想イメージを保存していった結果、容量不足に陥るケースが出てきます」と、春以降に問い合わせが多くなったという仮想マシンストレージの移動についても言及。
「System Center Virtual Machine Manager」に搭載された「Quick Storage Migration」機能を使えば、仮想マシンを実行中に仮想ハードディスクの格納先を変更し、VHDファイルの移動先ですぐにゲストOSが再開できるので、ストレージメンテナンス時に大きな効果を発揮してくれるそうだ。
運用管理のポイントについては、変更が迅速かつ容易にできる、仮想マシンが急増する可能性への対処、物理/ホスト/ゲストの各レベルにおける管理など、効率的な管理の必要性を示唆。さらに「従来のように『サーバ管理者=ハードウェア管理者』ではなく、仮想インフラ管理者、仮想マシン管理者など、環境に応じた権限の委任と設定が求められます。また、仮想マシンのバックアップやリストアを、サーバ管理者とアプリケーション管理者のどちらが担当するか、といった区分の明確化もポイントです」と語った。
クラウドサービスの利便性を高める「AF FS 2.0」
クラウドサービスへの展開に関しては「Windows AzureのLive ID、パートナークラウドのSAMLなど、クラウドサービス上ではさまざまなIDが使われています。これらをしっかり管理できる状態がなければ、Windows Serverで作ったイメージのクラウドサービス展開が非常に困難になります」と、フェデレーションの重要性を語った。
ここで重要な役割を果たすのが、ネットワーク環境を超えた認証環境が実現できる「AD FS 2.0(Active Directory Federation Service 2.0)」だ。AD FS 2.0を使うと、専用ネットワークを用いることなく、AD(Active Directory)で管理された自社ID情報でクラウドサービスへのシングルサインオンが可能になる。
しかし、いくらAD FS 2.0を導入しても、肝心のAD管理が疎かになっていたのでは意味がない。藤本氏も「日本企業の約80%がADを導入しているといわれていますが、一方では社内に複数のADが存在したり、権限が設定されていなかったり、といった状況も少なくないようです。そこでクラウドへの移行とAD FS 2.0導入の前に、まずはAD環境を再構築したいという企業が増えています」と、企業の現状について語った。
最後に藤本氏は「Hyper-Vをお使いいただく場合、将来的にクラウドで利用したいサービスを考慮しながら、プラットフォーム選定や新しいアーキテクチャの導入を進めてみてください」とアドバイスした。
日本における導入実績が拡大したHyper-V、そしてSystem Centerをベースとした管理の自動化は、企業における今後のクラウド利用をさらに加速させてくれるだろう。