Agilent Technologiesの日本法人であるアジレント・テクノロジーは9月16日、日本では2010年12月にサービスインが予定されているLTE対応の携帯電話の開発サイクル全般に対応することが可能な多機能な共通テストプラットフォーム「Agilent PXT E6621A LTEワイヤレスコミュニケーションテストセット」を発表した。
同社は以前より、2Gや3Gに対応した基地局エミュレータを提供してきたが、今回、新たに発表した同製品は、技術革新が激しいLTE端末の開発・検証に向け、新たに1からプラットフォームを構築し直すことで、要求される性能評価などを容易に行えるようにしたもの。
LTEの規格を規定する3GPPでは3GHzの周波数までをカバー範囲としているが、同社では将来の周波数拡大の可能性があるということで、6GHzまで対応するモデルも用意(500MHz~3.0GHz対応品が「E6621A-503」、500MHz~6.0GHz対応品が「E6621A-506」という型番になっている)。20MHzの帯域幅と2×2のMIMO(オプションで4×2にも対応)、擬似基地局を1台で実現することができ、Windowsベースのシステムを搭載したことによる、RFの特性評価、プロトコルの検証、メールや動画の送受信などのアプリケーションテストなど複数の検証を1台で対応することが可能となっている。
また、拡張プロトコル試験やアプリケーション試験に加えて、負荷試験やハンドオーバーを含むシグナリング試験、端末のスループット試験などに対応する機能などを用意。特にハンドオーバーに関しては、LTEのサービスイン当初は限定された地域でのみの提供などが想定されるため、エリア外になった時に、スムーズに3Gへと移行できているか、それをどのタイミングで切り替えるか、どうプロトコルを切り替えるかなどの複雑な判断が必要となるほか、LTEのサービスとしては当面はデータのみで音声は3Gでカバーするという話もあり、そうなった場合も3GとLTEが混線したりするのを防ぐ意味では重要な試験になってくる。
さらに、同プラットフォームは単なる研究開発での試験用途だけでなく、機能を拡張することで、3GPPが規定するConformance Testにも対応することが可能であり、1つのプラットフォームで対応することで、さまざまなテスタなどの使用方法などを覚える手間や、複雑なテストベンチの作製なども容易に行うことができるようになるという。
LTEの端末開発の流れ。E6621Aはこの中の「RF and BB Design Integration」から下流の「Conformance」までの範囲に対応するプラットフォーム。ちなみに、同社は基地局向けのソリューションももちろん展開しているが、端末メーカーをフォーカスカスタマとしているため、キャリアが中心となるNetwork Deploymentの事業部門を売却したとのこと |
なお、同プラットフォームの受注はすでに開始しているが、出荷は2010年10月からを予定。価格は搭載するテスト機能などにより異なるため、個別見積もりとしているが、参考価格としては、最小構成(RF試験のみ)で1,500万円程度、フル装備状態で2,500万円程度になるとの見込み。主なターゲットとしては、端末メーカーのほか、キャリアやPCなどに組み込むモジュールメーカーなどを想定しており、年間で50台の販売を目指すとしている。