Analog Devices(ADI)は、32ビット RISCライクなインストラクションセットと、デュアル16ビット乗算累積(MAC)デジタル信号処理(DSP)機能などを備えた同社のプロセッサ「Blackfin」として400MHz/800MMACに対応しながら、1万個受注時で3ドル(米国での参考価格)の単価を実現した「ADSP-BF592」を発表した。すでにサンプル出荷を開始しており、2010年12月より量産を開始する予定。

「ADSP-BF592」のパッケージ外観

Analog DevicesのDirector of Marketing for the Processor and DSP Technology GroupであるCollin Duggan氏

1万個時で3ドルという低価格を実現した同製品について、同社Director of Marketing for the Processor and DSP Technology GroupのCollin Duggan氏は、「同製品はBlackfinファミリの中で、最高のコストパフォーマンスと性能面積比を達成しているほか、低消費電力も実現しており、これにより、従来Blackfinが用いられてこなかった分野でも利用が可能となる」と説明する。Blackfinは従来、自動車のドライバー・アシスタンスやオーディオ関連、産業用機器としての試験/測定装置やモータ制御、医用画像機器などの分野に用いられてきた。今回の製品を用いることで、「I&I(産業機器)分野やドライバー・アシスタンス分野はもちろんのこと、我々はスマートメータでの適用に期待を抱いている」(同)と、新たなアプリケーションへの適用に向けた取り組みを行っていくとする。

Blackfinのポートフォリオと競合製品との比較。Blackfinの将来がハイパフォーマンス側に記されているが、これはあくまでハイパフォーマンス側も提供していきますとの姿勢を表したもので、「カスタマやマーケットのニーズにあった製品を出していくことが大前提。例えばすでに存在するデバイスとデバイスの間に入る製品が新たに出たとしても、それによりシステム全体として見た場合のBOMコストの削減などのメリットが出来ることから開発されたというわけで、そうした意味では、コアのパフォーマンス改善やペリフェラルの拡充などを進めていく」(同)ことが基本になるという

コストパフォーマンス面で見ると、1万個時で3ドルではあるが、1000個受注時でも3.55ドルとなっている。1万個時の性能価格比は、100MHzあたり0.88ドル、100MMACあたり0.44ドルであり、他社の同程度の性能を有する競合製品が例えば100MHzあたりで1.50ドルや2.70ドル、100MMACあたりでも0.75ドルや1.35ドルであることを考えると、かなり良い値を示していることがうかがえる。

また、性能面積比で見た場合、同製品はBlackfinシリーズ最小クラスの9mm×9mmのパッケージを採用。これにより、MMAC/mm2で見た場合の値は、9.87/mm2で、先述の競合製品が2つとも2.67/mm2程度であることを考えると、やはり高い性能を示していることとなる。

さらに低消費電力性能として、150MHz時で34mWを実現。300MHz/600MMAC時でも88mWを実現しており、400MHzで駆動させた場合でも127mWの低消費電力性を維持することが可能なほか、スタンバイ時も1mW未満であり、バッテリ寿命の延長が可能となっている。

「ADSP-BF592」の主な特長

加えて、カスタマの多様なニーズに対応するために、2つのSPORTおよびSPI、1つのPPI、4つの汎用カウンタ、そして標準ランタイムライブラリROMを搭載。これにより、外部メモリや外付けフラッシュメモリを使用しないで数値計算アプリケーションを動作させることが可能となり、セット製品の簡素化とBOMコスト削減が可能となる。

機能ブロック図とROMに搭載されているランタイムライブラリの概要

なお、同社ではすでに同製品の評価キットとして、「EZ-KIT Lite」の提供を行っている。同キットは199ドルで提供され、C/C++コンパイラ、アセンブラ、リンカを備えたVisualDSP++開発環境の評価セットが含まれている。また、Blackfinに対応するUSB 2.0対応JTAGエミュレータ「ADZS-ICE-100B」も提供済みとなっている。