ルネサス エレクトロニクスは9月9日に東京で記者会見を開催し、マルチメディア分野を対象とするSoC(System on a Chip)事業の事業戦略を発表した。なおルネサス エレクトロニクス(新ルネサス)は、NECエレクトロニクス(NECエレ)とルネサス テクノロジ(旧ルネサス)が2010年4月1日に合併して誕生した大手半導体ベンダである。NECエレと旧ルネサスはともにマルチメディア向けSoC事業を手掛けてきており、両者の事業を整理統合して半導体ユーザーに分かりやすく示すことが、早急の課題となっていた。
新ルネサスはSoC事業、マイコン事業、アナログおよびパワー半導体事業を事業の柱としており、SoC事業はSoC第一事業本部とSoC第二事業本部が担当している。マルチメディア分野の担当はSoC第二事業本部である。記者会見では、執行役員でSoC第二事業本部の事業本部長をつとめる茶木英明氏と、副事業本部長をつとめる松井俊也氏が説明にあたった。
マルチメディア向けのSoC事業を新ルネサスは、3つの主要な事業分野に区分けした。モバイル機器向けのSoC事業、車載情報システム向けのSoC事業、家庭用マルチメディア機器向けのSoC事業である。これら3つのSoCソリューションには、共通する技術(ハードウェアおよびソフトウェア)が少なくない。そこで旧ルネサスとNECエレの技術資産を持ち寄り、重複する部分を整理・統合することでマルチメディア向けの新しいSoCプラットフォームを構築した。
アプリケーション処理部とリアルタイム処理部で構成
新しいSoCプラットフォームは、アプリケーション処理と制御処理(リアルタイム処理)を分離した構造を採る。アプリケーション処理は32bit RISCアーキテクチャのARM CPUコアとソフトウェア(オープンなOS上で動くソフトウェア)が実行し、制御処理は32bit RISCアーキテクチャのSuperH CPUコアなどとソフトウェア(リアルタイムOS上で動くソフトウェア)が担う。いずれも3次元グラフィックス生成やビデオ信号処理といった特定の処理は、ハードウェア・アクセラレータにより、ソフトウェア処理に比べて短い時間かつ少ない消費電力で実行する。
そしてこのSoCプラットフォームをベースに、ハードウェアIPとソフトウェア部品を取捨選択することで、3つの事業分野に対応したSoCソリューションを構築する。モバイル用SoCソリューションの「R-Mobile」、車載情報システム用SoCソリューションの「R-Car」、ホームマルチメディア用SoCソリューションの「R-Home」である。
「R-Mobile」は、既存のSoCチップの中で携帯電話向けの「SH-Mobile APシリーズ」(旧ルネサス製品)とPND(パーソナル・ナビゲーション・デバイス)向けの「SH-Mobile Rシリーズ」(旧ルネサス製品)、モバイルマルチメディア機器向けの「EMMA Mobileシリーズ」(NECエレ製品)をまとめたもの。これにNokiaから買収した無線モデム半導体技術を組み込むことで、ワイヤレスモバイル機器に搭載するSoCとソフトウェアを提供していく。
「R-Car」は、既存のSoCチップの中でカーナビ向けの「SH-Naviシリーズ」(旧ルネサス製品)とカーナビ向けの「EMMA Carシリーズ」(NECエレ製品)をまとめたソリューションになる。自動車にあらかじめ取り付けられたタイプのカーナビでは、新ルネサスは国内で97%と圧倒的な市場シェアを有している。また海外でも57%とトップシェアを確保しており、海外市場でのシェアを2013年に65%に高めることを目標とする。国内市場では97%のシェアを維持することが目標である。
「R-Home」は、既存のSoCチップの中でセットトップ・ボックス(STB)向けの「EMMA2SL/C」(NECエレ製品)やデジタルテレビ(DTV)向けの「EMMA3TJ」(NECエレ製品)などをまとめたソリューションになる。
このほか、旧ルネサスとNECエレが独自に活動していた既存のパートナーシップを統合することを表明した。マルチメディア分野では旧ルネサスがSH-MobileコンソーシアムとSH-Naviコンソーシアム、NECエレがplatformOViAをパートナーシップとして展開していた。これを新しい共通のパートナープログラムに統合し、その傘下に、「R-Mobile」のコンソーシアム、「R-Car」のコンソーシアム、「R-Home」のコンソーシアムが存在する形に変更する。