今年7月にモバイルデバイスでネイティブに動作する BIアプリケーション「MicroStrategy Mobile」をリリースしたMicroStrategy。モバイルデバイスでBIが自由に使えるようになれば、その分ビジネスチャンスが開けるはずだ。
競合他社よりいち早くモバイル向け製品をリリースした同社はどのような戦略を有しているのか? また、同製品の特徴や導入メリットはどのようなものなのか? 今回、同社のExecutive Vice President, Worldwide Sales and Operations ポール・ゾルファガーリ氏に同社のモバイルビジネスに対する戦略、同製品の特徴などについて話を聞いた。
「モバイルBI」はMicroStrategyにとって最重要戦略
同氏は「モバイルBI」について「これからのBIの世界にやってくる大きな波。当社の戦略においては"No.1"、最も重要な柱だ」と説明した。
モバイルBIが次のトレンドとなりうる理由は3つある。1つは移動体通信の高速化だ。「現在、世界中で3G、3Gよりも高速な4Gに対応した携帯電話やスマートフォンを利用することが可能になっている」と同氏。2つ目の理由はモバイルデバイスの普及だ。iPhoneやiPadの登場により、ITに明るい人だけでなく、一般ユーザーが日常でモバイルデバイスを利用するようになってきている。3つ目の理由はモバイルデバイスの機能向上だ。CPUをはじめ、モバイルデバイスの処理能力は格段に改善されており、「BIにも耐えうるレベル」と同氏はいう。
こうした背景を踏まえ、同社としてはWebベースで提供している機能はすべてモバイルで提供することを目指すという。
競合他社は現時点ではモバイル機能にはあまり力を入れていない。そうした状況について、同氏は「それ(モバイルBIに着手していないこと)は競合にとってよいことではない。しかし、競合の多くはプロダクトのポートフォリオの実現にエネルギーを費やしており、モバイルにまで手が回っていない」と指摘した。こうした競合に対し、同社はBIのイノベーションにフォーカスできるからこそ、モバイルBIに対応した製品をリリースできたというわけだ。
iPad/iPhoneのマルチタッチでBIが利用可能
それでは、MicroStrategy Mobileは具体的にどのような特徴を備えているのだろうか?
同氏は「MicroStrategy Mobileはキーボードやマウスがなくても、BIを活用することを可能にする」と話した。同製品の最大の特徴とも言えるのが、Appleのデバイス独特のマルチタッチの操作でさまざまな機能を利用できる点だ。
例えば、縦横にスワイプすれば画面がスクロールし、左右にスワイプすればページが切り替わる。また、タップによって「ドリル」「探索」「リンク」などが可能であり、シェイクでリフレッシュすることもできる。
同氏は実際にiPadとIPhoneで同製品を使って見せてくれたが、その動作は軽快かつ簡単であり、ともすればビジネスアプリケーションを利用していることを忘れてしまいそうなくらいだ。また、表示されるダッシュボードやグラフもPCで見る画面と遜色ない。
さらに、PCは搭載していないけれどAppleのデバイスが搭載している機能を用いることで、同製品は「PC以上の機能が利用できる」(同氏)のだ。
まず、分析を絞り込むための入力情報としてカメラで撮影した画像を用いることができる。また、データを地図上にプロットして、ピンの色で閾値や情報を探索するピンを表示することも可能だ。さらに、GPS機能で取得した位置情報を用いて、現在地に近い情報を地図にプロットして表示したり、パーソナライズしたレポートを表示したりすることができる。
これだけの機能を実現するとなると相当な苦労があったはずと思い、同氏に聞いたところ、「MicroStrategy Mobileが出来上がるまでには長い年月がかかった。に割いたリソースとコストはかなりのものだが、それだけわれわれがモバイルBIを重要と見なしているのだ」という答えが返ってきた。
「MicroStrategy Mobile」のiPhoneの操作画面 |
パートナー企業や顧客との情報共有を実現
同氏は「PCよりもモバイルデバイスの数が多い分、需要は大きい」と話す。「同製品がリリースされて以来、欧米、アジア、南米を訪問したが、どの国でも非常に反応が大きい。モバイルBIがビジネスにもたらす価値をわかってもらえているという手応えを感じる」
ユーザーは同製品を導入することで、どのようなメリットを享受できるのだろうか?
同氏はまず「アクセス性の向上」を挙げた。「従来のBIはオフィスにいるマネージャーが使うものだったが、モバイルBIはどこからでもアクセスできるので、意思決定のスピードが上がるとともに、頻度と粒度も上がる」
また、モバイルBIを活用することでパートナー企業や顧客との間で情報共有が促進される。ある銀行では、同製品を用いて顧客である法人に情報を提供しており、また、投資情報を顧客に知らせるといった使い方もできる。実際、同社の製品はエクストラネットでの利用が増えているそうだ。
そのほか、eBAYでは同製品によってファイナンシャル分析&管理を行っているほか、営業パフォーマンス管理や売上管理などすでにさまざまな用途で同製品の利用が始まっている。
モバイルBIの普及の可能性が高い日本市場
最後に、モバイルBIの登場によってBI自体はどのように変わっていくのか、同氏に尋ねてみたところ、「モバイルBIによって、2つの方向に向かってBIは拡大していく」という答えが返ってきた。2つの方向とは、「今までBIを使っていた人たちがBIを利用する頻度が上がること」と「今までBIを使っていなかった人がBIを使うようになること」である。
さらに同氏は「モバイルBIによってアクセスしやすくなることで、情報の価値が上がる」と指摘した。「今後、電子情報は数、種類ともに増えていく一方だ。これは、企業で使える情報が増えることを意味する。ここでは、多くの情報の中からいかに簡単に有益な情報を取り出せるかということが重要になる」
また、「予測がしづらい今日、企業が必要な情報を入手できるようサポートできる企業の将来は明るい」と同氏はアピールした。
これまで欧米よりもBIの導入が遅れている言われてきた日本だが、モバイルBIは普及するだろうか?
同氏は「クオリティに対して厳しく、モビリティについて関心が高い日本市場において、われわれが展開する新たな戦略はマッチしている。日本の企業に対して、モバイルBIがもたらす生産性と操作性の向上といった価値を感じてもらう機会をぜひ作りたい」と述べた。
個人的には、iPadの画面の向きを変更するとダッシュボードの表示も変わったり、iPhoneをシェイクすると画面がリフレッシュされたりといった操作にビジネスアプリケーションとしての新鮮さを感じた。同製品なら、「難しいアプリケーション」というBI製品のイメージを壊すことも難しくないように思う。
今後、iPadとiPhoneのビジネスシーンでの利用はますます増えるだろう。その時、どのようなアプリケーションをどのように使いこなすかで、企業の競争力に差がつくはずだ。MicroStrategy Mobileが日本企業の競争力の強化に役立つことを期待したい。