NXP Semiconductorsは9月8日、都内で会見を開き、同社のハイスピードコンバータ事業についての説明を行った。
同社のハイスピードコンバータ事業の取り扱う主な製品として2010年には、すでに10~16ビットのA/Dコンバータ(ADC)「Andromeda」(40~125MSps)、10~14ビットのD/Aコンバータ(DAC)「Orion」(最大750MSps)などの製品を提供しており、従来の製品と併せて数多くのハイスピードADCおよびDACをラインアップしている。また、2011年から2012年にかけて16ビットDACで1.25GSpsの性能を持つ「Vega」や16ビットADCで125MSpsの性能を持つ「Antlia」、16ビットADCで250MSpsの性能を持つ「Tucana」などの提供を行うべく開発が進められており、その先の製品としてシングル/デュアル/クアッド12~16ビットDACで1.25GSps対応の「Milkyway」なども開発が進められているという。
ADCおよびDACのロードマップ。すでにロードマップ上では次世代製品が出ているようにも見えるが、開発スタートラインが各ブロックの左端とのことで、サンプルとして製品として出てくるのはだいたい3/4を超えたあたりからとのこと |
主なターゲット市場は、ワイヤレスインフラや携帯電話のリピータ、P2P通信、医療検査装置、測定器、試験・計測装置などで、こうした分野に向けた戦略として「ワイヤレス機器ベンダが信頼してもらえるパートナーであることを目指すほか、FPGAベンダなどとも連携してアプリケーションとしての専門知識を提供する集団を目指している」(同社 Product Line(PL) Speed Converters ManagerのMaury Wood氏)としており、自社のRF小信号やRFパワー製品などと組み合わせたシグナルチェーンとして提供を行い、かつこうした多くのカスタマやパートナーとの連携を行っていくことで、同市場において、現在のシェア5%から2012年には10%を超すシェアへと拡大したいという。
同社の提供するハイスピードADC/DACは一般的なLVCMOSやLVDS DDRインタフェースに対応しているほか、次世代シリアルインタフェースである「JESD204A」などにも対応しており、TucanaとMilkywayについてはJESD204Aに加え、同Bへの対応も予定されている。
Wood氏は、自社のADC/DACについて、「ADCでは、消費電力やリニアリティを競合製品と比べた場合、キャパシタアレイのキャリブレーションを行うなどでバラつきを抑制しており、競合製品比で最大5dBc高いSFDRを達成している。また、DACの方でもマルチキャリアGSMに適合したACLRやNSDのほか、競合品比で最大6dB高いSNRを実現している」(同)とその優位性を強調する。
さらに、JESD204Aインタフェースに準拠した製品を用いることで、PCBの小型化やコスト削減、実装のシンプル化による信頼性の向上が図れ、PCBのサイズは従来インタフェース比で最大10%、配線数削減によるPCBコストも同25%、設計コストおよび設計工数を同20%削減でき、消費電力も同10%、BOMコストも同10%削減することが可能となる。
加えて、SERDESを搭載したFPGA(Xilinx、Altera、Lattice Semiconductor)との連携が可能で、FPGAベンダが提供するJESD204AのIP(レシーバ)をADC(DAC)側のJESD204A(トランスミッタ)とのインターオペラビリティの実証も済んでいるという。
同社ではJESD204Aに独自の機能拡張を施したハイスピードコンバータを実装したDAC/ADCを「CGV(Convertisseur Grande Vitesse)」という名称で2009年より提供しているが、同製品では上記のような特長を生かし、最大4.0Gbpsのデータレートに対応可能に拡張(規格では3.125Gbps)しているほか、伝送距離も100cm(規格では20cm)へと延長されている。また、デターミニスティック(確定的)レイテンシにより、最大16個のDACからのデータストリームをサンプル同期および位相コヒーレントにすることを可能とする「マルチプルDACシンクロナイゼーション」なども搭載されている。
なお、同社では2010年に58のパラレルDACおよび25のCGV DAC、12のパラレルADC、6CGV ADCの合計101製品の提供を行っており、Lattice、Altera、XilinxのFPGAを用いたデモボードも124種類用意しており、「我々はJESD204AおよびBについてコミットしているが、まだまだパラレルインタフェースを活用するカスタマも多くいる。今後はそれらをどちらのカスタマに対しても、我々の強みを提供していくことで、市場シェアの拡大を図っていければ」(同)としており、パラレルと同数程度にCGV製品の提供を行い、新市場の掘り起こしなども推進していくとしている。