米Hewlett-Packard (HP)は9月7日(現地時間)、同社元CEOのMark Hurd氏に対してOracleへの入社を阻止すべく米カリフォルニア州上位裁判所に訴訟を申請した。米Wall Street Journalなど複数のメディアが同日に報じている。これはセクハラ問題で辞任した同氏の、米Oracle共同プレジデントへの就任が正式発表されたことを受けたもの。Hurd氏は元HPトップという立場を通して知り得た数々の機密情報を抱えており、これが流出することを阻止する狙いがあるという。

本件の訴状はWSJのサイト上にPDF形式で確認できる。今回の訴訟はOracleを対象したものではなく、Mark Hurd氏本人ならびに、Oracleへの就職を斡旋している不特定多数の個人が被告として列挙されている。Hurd氏は2006年のHP社長兼CEO就任から、後の会長就任で3役を兼任した状態でおよそ3年間、HPトップとして同社業務上における数々の事情に精通していたとみられる。こうした人物が間髪を置かずに競合他社のNo.2の役職へと就任することは、HPの将来にとって不都合が生じる可能性があり、Hurd氏のOracleプレジデント就任を訴訟で防ぐのがその狙いとなる。特にSun Microsystems買収以降、Oracleはハードウェア事業への参入で完全にHPの競合となっており、競合他社への転身を禁ずるいわゆる「非競争条項(Non-compete clause)」に抵触するのではないかというのがその主張だ。

この非競争条項や訴状の分析についてはWSJ Blogにあるまとめがわかりやすい。それによれば、HPはHurd氏が退社後も企業秘密を守る条件として多額のキャッシュや株式、ストックオプションを与えており、Oracleへの移籍がこれら契約を阻害する可能性を強調している。また前述の非競争条項は、こうした契約の存在とともに移籍の正当性を否定するものとなるが、一方で当該2社が本拠地を置くカリフォルニア州では「競合するビジネス活動をしない場合のみ」という条件がつけられており、競合他社への移籍が必ずしも非競争条項に抵触するとは限らない。そこでHPでは「Hurd氏がHPで知り得た情報を活用しない限り、Oracleプレジデントとしての役割を十分に果たすことはできない」という主張を行っており、将来的な可能性の部分を強調する。いずれにせよ、この問題が一段落つくまでしばらくの時間が必要なようだ。